4月28日のJ2第11節・甲府vs千葉は、運命や因果といった簡単な言葉で片づけられないゲームとなった。
結果は後半アディショナルタイムの土壇場で、千葉がDF近藤直也の同点ゴールで追いついての1-1のドロー。甲府は勝利目前で勝点3を逃し、翌々日の同30日、監督だった吉田達麿氏が契約解除となった。
今季リーグ戦における戦前の状況を整理しておくと、“ホーム未勝利の甲府”に対し、“アウェイ全敗の千葉”の構図。両者とも下位に低迷する苦境から脱しようと、喉から手が出るほど勝点3を欲するシチュエーションだった。
選手と指導者あるいは強化責任者。立場こそ違えど、同点ゴールを決めた千葉の近藤と甲府の吉田氏は、長年にわたり同時期に柏に所属していた。吉田氏が柏を指揮した15年には監督と選手の関係だった。
一方、吉田氏の契約解除の理由は一つではないにしろ、結果的に同点ゴールが引き金の一つになったことは否めない。近藤は「僕がどうこう言うことではないです」と前置きした上で、言葉を選びながら心境を語ってくれた。
「結果がすべての世界。お互い厳しい世界に身を置いているから、そういうこともある。僕ら(選手)も含めてですけど、1年1年が勝負だし、いつ首を切られてもおかしくない職業。いいサッカーをしていても勝てないチームもあるし、難しいですけど、それでも、すごくやりがいのある仕事でもあります」
互いに“ハイリスク・ハイリターン”の世界に身を投じるプロフェッショナルというリスペクトの気持ちがあるからこそ、現実を正面から受け止める。
試合直後、近藤が「すごく指導力のある人。感謝しているところは本当にたくさんあります」という吉田氏のいるベンチ前に出向くと、抱き合って健闘を称え合っていた二人。それはプロの美学と残酷さが入り交じるワンシーンだった。
(千葉担当 大林洋平)
2018/05/01 19:01