前傾でもなければ後傾でもない。左寄りでもなければ右寄りでもない。重心は常に体の軸の真下に置く。そうすることであらゆる方向にスムーズに、そしてスピーディー動くことができる。
これは前節の千葉戦、特に後半に相手のボール保持時間が増したときの山瀬功治のポジショニングを含めた守備プレーの的確さ、対応力の素晴らしさと、今節の相手である讃岐との昨季対戦で計3ゴールを挙げたときの山瀬のゴール前に入る動きの見事さとその嗅覚の鋭さを思い出したときに頭の中に浮かんだイメージだ。
山瀬はそんなポジショニングや動きに関して次のように解説する。
「試合の流れ、相手の置かれた状況、周囲の味方の位置や状況、あるいは過去の経験による自分なりの個人的な判断というものが動きや判断の基礎材料にはする。けれども、それだけで最終的な決断するわけではない。そこにプラスして周囲、チームで言えば味方の声や意見を加味して、どうするかを決めるようにしている」
十分な実績を持つ山瀬だが、他者の声を聞く耳と思考の柔軟性ももっている。それは同じシチュエーションが起こる確率が極めて低いサッカーにおいて、過去のデータや実績のみに基づいてアクションを“決めつける”ことの無謀さや危険を知っているからだ。
つまり、冒頭のイメージは山瀬の実際のプレー時の“身体的姿勢”であると同時に、“メンタル的姿勢”をも表しているのだ。そんな山瀬に「今節の相手である讃岐から昨季は計3ゴールを挙げているし、個人的にも相性がいい相手では?」との質問を投げると「去年は去年。今年は今年。相性のよさとかは感じません。新たな戦いとして、今回の狙いを明確にして、それをやるだけです」との答え。
そう、山瀬の体と心は常に“ニュートラル”だ。
写真:島田徹
(福岡担当 島田徹)
2018/04/25 20:05