著者:鈴木 満(すずき・みつる)
発行:6月8日/出版社:幻冬舎/価格:1,300円(本体価格)/ページ:247P
常勝軍団の中枢が語る強者の本質。鹿島はいかにして鹿島たり得たか
昨年のクラブW杯決勝。レアル・マドリーと激闘を繰り広げた鹿島の姿は記憶に新しい。“鹿島=常勝クラブ”。Jリーグ発足から今年で25年目を迎えるが、そのような認識が完全に浸透していると言えるだろう。そんな常勝軍団のチーム作りにおける中枢に、本書の著者である鈴木満氏がいることは、サッカー界では広く知られた話だ。
第1章は、一度は引退したサッカーの神様・ジーコが現役に復帰し、プロ化したばかりの鹿島に加入したところから話が始まる。当時、監督を務めていた鈴木氏と、世界のスーパースターが二人三脚でチームを作ってきた歴史が興味深いエピソードを交えて詳細に綴られている。この章を読むと、やはり鹿島というクラブの源はジーコが残した教えにあることがハッキリと分かる。
第2章では、強化部長という仕事の本質について語る。そして第3章では、いよいよ本書の本題に突入。Jリーグ開幕以来、鹿島というクラブがいかにして常勝たり得てきたのか。その核心に迫る。鹿島に脈々と流れる勝者の本質について、45個に及ぶ具体例を記し、鈴木氏がその一つひとつに解説を加えていく。プロスポーツとは、ある意味、結果がすべての世界。鹿島がこれまでに、Jリーグ、ナビスコカップ(現・ルヴァンカップ)、天皇杯の主要3大会で獲得した『19』というタイトル数は他クラブの追随を許さず、それだけの結果を残してきたクラブの強化責任者の話だけに、やはり説得力は抜群だ。記されている事柄には常識的なことも含まれているが、それらすべてを毎年実行できるかどうかとなると、話はまた別。組織を円滑に運営していく上で重要なことを、ブレずに、逃げずに、やり続けるその胆力と継続性こそが、鹿島に脈打つ強者の本質の正体だろう。そしてそれは、ピッチ内でのサッカーの内容にも通ずる。
鹿島のサッカーは、現在の浦和が用いる[3-4-2-1]や、磐田の黄金時代を支えた“N-BOX”など特殊な形ではなく、[4-4-2]がベースの極めてオーソドックスなスタイル。それでも、ピッチに立つ選手11人全員がやるべきことをやる。サッカーの本質を理解して戦っていることが強さの秘訣だ。また、強豪と呼ばれるチームでも必ず直面する問題が“世代交代”だが、鹿島はチームとして大きく沈む時期を作らない。その理由も、本書を読めば理解できる。
第5章では、鹿島に関わってきた人物が鈴木氏について語っている。立場は多岐にわたるが、それぞれに興味深い内容であり、第5章までに記されてきた内容と符合する点も多い。人を扱う仕事における繊細さ、愛情、厳しさ。さまざまな要素をバランス良く持ちながら、チーム作りに心血を注いでいる鈴木氏の丁寧な仕事ぶりが鹿島を支えていることがよく分かる一冊だ。
(C大阪担当 小田尚史)
2017/07/09 12:00