著者:パトリック バークレー(PATRICK・BARCLAY)
発行:9月20日/出版社:東洋館出版社/価格:1,600円(本体価格)/ページ:272P
輝かしい実績と挑発的な姿勢。スペシャル・ワンの分析本
ジョゼ・モウリーニョ。言わずと知れたサッカー界のスペシャル・ワン(特別な存在)である。
過去に4人しか達成していない、異なる2チーム(ポルト、インテル)を欧州王者に導いた監督のうちの一人であり、ポルトガル、イングランド、イタリア、スペインでリーグ戦、カップ戦のタイトルを獲得してきたそのキャリアは賞賛に値する。現代の名将と形容して差し支えないだろう。
本書はその名将が築いてきたキャリアと、彼の代名詞とも言えるメディア対応、関係者の証言を軸に、稀代のサッカー監督の人物像をあぶり出した、第三者による分析本である。
ボビー・ロブソンやルイ・ファン・ハールに師事したキャリアの黎明期、欧州CLを制し、一躍世界にその名を轟かせたポルト監督時代、スター軍団を率いたレアル・マドリー監督時代など、本書内では包括的にそのキャリアを振り返っているが、中心となるのは、彼をスペシャルたらしめる所以となった一度目のチェルシー監督時代だ(監督就任会見でモウリーニョ自身が自らをスペシャル・ワンと呼んだのがそもそもの始まり)。
その情報量と描写力はさすがロンドン在住で、長年フットボールシーンを追いかけてきた著者。かつてノッティンガム・フォレストを率いて輝かしい実績を残し、破天荒な人物として知られた名将ブライアン・クラフを引き合いに出すなど、機知に富んだ文章で洞察を試みている。
挑発的なメディア対応と審判批判、過剰なまでの自信などから、時にスピシャス・ワン(はったりの男)とも称され、近年ではヒールとしての印象も強いモウリーニョ。一方で、直接彼と関わりを持った人々からの人望は非常に厚く、率いてきた選手からは絶大な信頼も得てきた。激情家で冷徹な一面と、人情家で兄貴肌な一面を使い分ける稀代のモチベーターは、いかにして数多の栄冠を勝ち獲ってきたのか。その勝者のメソッドの一端を垣間見ることができる一冊となっている。
試合中のピッチ脇で激昂する姿、試合前、試合後の会見で見せる攻撃的な姿を思い浮かべながら読み進めると、読了後には、彼が現在監督を務めているマンチェスターUの試合が無性に観たくなるだろう。
(BLOGOLA編集部)
2016/12/25 12:00