編者:前田 拓(まえだ・たく)
発行:5月7日/出版社:東邦出版/価格:1,500円(本体価格)/ページ:224P
予定調和の小説よりも瑞々しく刺激に満ちた一冊
人は予測不能な場面に遭遇したとき、心から感動し、絶望する。当たり前の話だが、予測範囲内の現実に直面しても、人の心は大きくは揺れ動かない。
サッカーが世界中の人々に愛されている理由もそこにある。驚きに満ちた試合展開や思いがけないチームの躍進。はたまた、期待を大きく裏切る低質なパフォーマンスや有力チームの予想外の大失速…。人々はそんな“カウンター”に衝撃を受け、歓喜し、落胆する。そして気付いたときには、そんな刺激を与えてくれるサッカーというスポーツから離れられなくなっている。
サッカーの魔力は試合やプレーだけに宿るものではない。サッカーに関わる人間のパーソナリティーや彼らが発する言葉の端々にも宿る。そこに焦点を当てたのが、本書だ。取り上げられているのは、ズラタン・イブラヒモビッチ、ディエゴ・マラドーナ、エリック・カントナといった、ダーティーでいわくつきの面々。彼らがこれまでに放ってきた奔放かつ過激な発言の数々が、その背景とともにまとめられている。「(バルセロナの選手は)まるで調教された子犬と一緒だぜ」(イブラヒモビッチ)、「夜は俺のフレンドだ。プライベートではやりたいようにやる」(ロマーリオ)、「オレはダイブをする。認めるよ」(ルイス・スアレス)など。相手にどう思われようが構わない。笑ってしまうほど自由で、真っ直ぐな言動は、読者に人生観や世界観を揺るがす契機を与えてくれる。
是非、周りにいるサッカーに興味のない人にこの本をオススメしてほしい。予定調和の小説よりもよっぽど瑞々しく刺激に満ちた一冊だ。また、彼らがそのような人間性を形成するに至った経緯や生い立ちも丁寧に描写されているため、彼らのことをすでに知っているサッカーファンも楽しめる内容になっている。空気を読まない、予測不能な発言がまとめられたこの本には、サッカーの本質的な魅力、愛おしさが詰まっている。
(BLOGOLA編集部)
2016/08/17 12:00