3試合ぶりの勝利を目指したチーム同士の中位対決は、昇格プレーオフを目指すには両チームともに後退と言わざるを得ない“痛み分け”で終わりました。その試合でマン・オブ・ザ・マッチ(MOM)を選出は少々悩みました。私は多くの場合、ドローゲームでは、試合後、精神的に上位にいられる追いついた側のチームから選ぶようにしているのです。とりわけ、この試合は後半ロスタイムに水戸が同点に追いつくという劇的な展開であったために、水戸の選手を選ぶべきだろうと思っていました。実際、試合直後の時点では、柱谷監督の狙いどおりの起用に見事応えた岡本達也選手で気持ちは固まっていました。
しかし、本紙のマッチレポートで選んだのは愛媛の石井謙伍選手。試合後、石井選手が自身のゴールシーンを振り返り、「その時間は(疲れで)もう足が動かなかったけど…」と話しました。しかし、その後に訪れたカウンターのチャンスに最後の死力を振り絞って走り込み、何とか足を当てての執念のゴールだったことを知りました。石井選手は豊富な運動量を持ち味とし、労を惜しまぬ献身的なプレーでピッチを駆け回ることで知られていますが、そのスタミナをもってしても“もう動けない”ほどに走り尽くしていたこと。そして、そんな状態であっても諦めずに走り続けたこと。これこそ今季、チームが掲げたスローガンの「BORBA(クロアチア語で“戦う気持ち”)」そのものだと感じ、それを考えると、MOMに選ばずにはいられませんでした。愛媛としては悔しいドローでしたが、石井選手が見せたこの“BORBA”がチーム内に蔓延すれば、再び好調時の愛媛に戻れるのではないか…と強く感じました。
(愛媛担当 松本隆志)
2012/07/18 16:50