後半ロスタイムも目安の4分を回り、アライール選手がエリア内に放ったクロスが、もし千葉DFにはじき返されていたら、その時点で終了のホイッスルは鳴っていたでしょう。しかし、そのクロスは有田選手の執念のヘディングゴールを呼び、愛媛は土壇場で勝点1を得ることに成功しました。
愛媛は前節で14試合ぶりの勝利を手にし、今季二度目の連勝を目指しての試合でしたが、結果はドロー。しかし、あまりにも大きな意味合いを持つドローだったと思います。もし、あのまま敗戦を喫してたら、“空白の13試合”で演じ続けたような単なる惜しい試合で終わっていたでしょう。しかし、この試合では明らかにそれらの試合とは異なる勝利への共通意識がありました。
それを象徴していたのが86分の福田健二選手の投入でした。対人プレーでの強さと高さ、そして、エリア内での存在感のある福田選手がビハインド状態の終盤に投入されたことがどういう意味かを、チームメイトはしっかり理解していました。
試合後、福田選手は以下のように話しました。
「岐阜戦でも僕が途中から入った時にこういう展開があったけど、その時はロングボールを使わずに回して回してそのまま終わっちゃった。でも今回は僕が入って、ハッキリと僕のところ目がけてボールをくれていたし、チームとしてやることがハッキリしていた」
また、DF浦田選手も「ケンジ(福田選手)さんが入った時はシンプルに(ロングボールを入れて)やろうというのは決めていた」と、福田選手の特長を最も生かすプレーをすることは明確だったようです。
信頼してロングボールを入れるチームメイトの期待に応えるように、福田選手は前線で格好のターゲットになり、千葉にとっては守勢に回る苦しい時間帯でこの上ないやっかいな存在になり得ていました。
前線に高さと強さのある有田選手、福田選手のツインタワー状態になったことで千葉守備陣のロングボールへの警戒感は一層高くなり、それと同時にストレスも大きくなったでしょう。通常ならば両脇を固められるようなマークで苦しむ有田選手が、劇的同点弾を決めた時は一瞬マークがルーズになったのも、目を離せない福田選手の存在があったからに他なりません。
直接的な成果はなかったものの、10分足らずの時間で大きな存在感を見せた福田選手、「(投入時に)チームに勢いがあったし、その流れに何とか自分も一緒に乗ってプレーしようと思った」という気迫みなぎるプレーがなければ、土壇場でのドラマは生まれなかったのではないでしょうか。
(愛媛担当 松本隆志)
2012/10/03 15:21