自分で言うのも何ですが、大分県民は熱しやすく冷めやすい気質の持ち主だと思います。基本的にミーハーで、はやりものには飛びつくけれど、すぐに飽きてしまう。有名アーティストのコンサートチケットも初回はまたたく間に売り切れますが、公演2回目以降は伸び悩み。ブームのあいだは売れ筋だったものも、しばらくたてば棚の隅でデッドストックまっしぐら。…いえ、すみません。大分県民のそんなところも、それはそれで愛すべきわたしたちだと思っているのですが。
8月16日付で、大分が募っていた「J1昇格支援金」が1億円を突破しました(※大分トリニータJ1昇格支援金 目標金額1億円到達のご報告 http://www.oita-trinita.co.jp/news/detail/?cate=7&id=736)。受付を開始した5月23日から3カ月弱で、これはすごいことです。
2008年、大分がナビスコ杯で優勝した年。チームの好調につれて観客は見る見る増え、ファイナルの日、国立競技場に駆けつけた大分県民は2万人余にのぼると言われました。2009年、不調とともに観客は減り、J2降格してからはジリ貧で、昨季は「3万人動員プロジェクト」の行われた第20節FC東京戦を除けば入場者数が1万人を超えたのはわずか2試合のみ。さまざまな問題も入り組んで、「トリニータは大分に必要なのか」が突きつけられたような日々を取材し続けてきました。
だから正直、5月の時点で、募金が目標額に到達するとは思っていなかったことを、ここに告白しておわびします。熱しやすく冷めやすいなんて言ってごめんなさい。
昨日までに集まった100,963,355円には、支援した方々のそれぞれの思いが込められています。晩酌のビールを我慢したお父さん。ヘソクリを捻出した主婦に、お小遣いを全額つぎ込んだ幼稚園児。楽しみにしていたアウェイ遠征に「行ったつもり」募金。ゴールするたびに5千円。勝点3で1万円。行きつけの店に募金箱設置をお願いして回った人や、毎日ブログ記事を更新して、その広告収入を募金にあてた人もいます。大分遠征が楽しみという他クラブのサポーターや、横浜フリューゲルスを愛していた人も。「こんなの集めても、昇格できなかったらどうするんだよ」と懐疑的な姿勢のままに「でもやっぱり昇格してほしいから」と財布を取り出す姿もありました。
青野社長以下FCスタッフや関係者の努力が認められた証しでもあるでしょう。そしてピッチで結果を出しながら、トレーニングの合間を縫ってチラシ配布やイベント参加に奔走してくれた監督やスタッフ、選手たちに応える形で。
さらに、大分ユース出身の清武弘嗣選手(現ニュルンベルク)と東慶悟選手(現大宮)のロンドン五輪出場や、地元出身Jリーガーの活躍。U-18、U-15の全国大会出場。町に飛び出してのスクールや、施設訪問。ちょっとしたときのファンサービスや支援活動。創設以来このクラブに関わってきた多くの人たちのそれぞれの活動が、「トリニータは大分に必要だ」という思いを呼び、この数字に結びついたものと思われます。もちろん、すべての人が好意的で協力的というわけではない。けれども、これだけの資金が、実際に集まったという事実。
だけど、これで終わりではありません。昇格のためには、リーグからの融資の返済期限である10月12日までに、計3億円を準備しなくてはならない。この支援金1億円突破を受けて、県や経済界も動きそうな気配です。そしてクラブは自力で資金を回せるまでになるように、一層の営業努力を重ねなくてはなりません。
こうなったら、何が何でもJ1昇格を果たさなくては。「ありがとう」も「おめでとう」も、そのときに初めて言う言葉。3連戦に向けて、暑い日差しの中、充実したトレーニングが続きます。
(大分担当 ひぐらしひなつ)
2012/08/17 21:43