平成25年8月11日
豊田国際ユース(U-16)大会最終日
「U-16日本代表 0-2 U-16メキシコ代表」
8月8日から11日にかけて愛知県内にて開催された豊田国際ユース大会に出場したU-16日本代表を取材してきた。1997年1月1日以降に生まれた選手で構成されたチームは“東京五輪(仮)世代”。この秋にU-17W杯を控える一つ上のU-17日本代表のBチームと位置付けることも可能な集団だ。
そのメンバーリストに異彩を放つ名前がある。サイ・ゴダード(Cy Goddard)。名門トッテナムのアカデミーで10番を背負う男は、日本人の母親を持ち、日本国籍を有している。このため、今年からU-16日本代表の一員として名を連ねることとなった。「世界中の選手が選考対象」と、かねてより語っていた吉武博文監督だが、実際に海外の選手を呼ぶのは彼が最初となった。
取材に訪れたのは大会の最終日。ゴダードは[4-3-3]の右インサイドハーフ、このチーム特有の用語で言うところの“右フロントボランチ”で先発した。身長は163cmと日本の中でも小柄な部類。自らの武器を「スペースを見付けてチャンスを作ること」と語るプレーメーカーだ。フィジカル面を重視するイングランドでは評価を得にくいタイプなのかもしれない。
肝心の試合は「やってはいけないことをやると見逃してくれない」(吉武監督)メキシコの抜け目ない攻撃を受けた日本が前半終了間際と後半開始早々に失点し、0-2で敗北。ホームで優勝を許す格好となり、「やられてはいけない時間帯でやられるのはA代表と同じ。これはもはや日本の文化」と吉武監督を嘆かせる結末となった。
では、異文化で育ったゴダードが、そうした日本に刺激をもたらすことになるのだろうか。吉武監督は「彼を選んだのは良い選手だったからだ」としつつも、「二義的には(文化的刺激を他選手に与える部分が)ある」と言う。ゴダードの長所を聞かれたときに、「言うことを聞かないところだ」と答えていたのも、一つの回答だろう。監督から与えられる指示の幅を出ず、しかし超越した回答、自分の答えを出すこと。どうしても指示待ちになる“日本育ち”に対し、異国育ちのプレーは示唆に富むようである。
ゴダードが日本に来るのは5度目とのことだが、サッカーで来たのはこれが初めて。初めて味わう日本のピッチの感想は「まず暑かった」と冗談めかして語りつつ、「みんなが歓迎してくれて、すごくエキサイティングな経験だった」と目を輝かせた。英国の名門で育つ、日の丸の可能性。ゴダードの日本代表入りは、世界各地でプレーする“日本人”に一つの目標を与えることにもなるはず。その健やかな成長を、楽しみに待ちたい。
(photo: Takaya Hirano)
(EL GOLAZO 川端暁彦)
2013/08/11 23:11