総理大臣杯の北信越代表(1枠)を決める北信越学生サッカー選手権決勝が23日に金沢市民サッカー場で行われ、新潟医療福祉大(新潟)と北陸大(石川)が対戦。両チームとも前日には準決勝を戦い、中ゼロ日でこの決勝を迎えたが、試合は延長110分間(延長戦は10分ハーフ)をとおして各所でバチバチのバトルが繰り広げられた。特に大学生離れしたフィジカルの強さを誇るFW長島グローリー(北陸大)とCB喜岡佳太(新潟医療福祉大)のエアバトルは、「1対1で負けない」というサッカーの原点を思い起こさせる激しいもの。そんな激闘をPK戦の末に制した新潟医療福祉大が2連覇を達成し、8月29日に開幕する総理大臣杯の出場権を獲得した。
■PK戦で魅せた両ゴールキーパー
(PK戦で二人を止めた新潟医療福祉大のGK宗像)
試合前の下馬評としては去年のインカレにも出場した新潟医療福祉大が優勢だった。北陸大の西川周吾監督が「われわれは完全にチャレンジャー。向こうが格上ということを理解してゲームに臨んでいる」と話したように、新潟医療福祉大がある程度ボールを握り、北陸大がカウンターからチャンスをうかがう展開になることが予想された。
しかし、試合序盤に攻勢をかけたのは北陸大のほうだった。球際の強さで上回り、セカンドボールを拾いながらセットプレーを多く獲得し、相手ゴールに迫る。ただ、地力に勝る新潟医療福祉大も左サイドのシマブク・カズヨシのドリブル突破を中心に徐々に盛り返す。その展開はスコアレスで迎えた後半も同じで、序盤は北陸大のペース、そこから新潟医療福祉大がしっかりと押し返していった。両チームともにチャンスは作ったが試合は90分では決着がつかず、延長線に突入。そしてこの試合最大のチャンスを迎えたのは北陸大だった。95分にFW長島グローリーがポスト直撃のシュートを放つと、ここから波状攻撃で新潟医療福祉大ゴールを次々と脅かす。しかし、ネットを揺らすことはできず決着はPK戦へと持ち越された。
ここで両チームのGKが魅せる。新潟医療福祉大の宗像利公が二人を続けて止めると、北陸大の長谷川諒も1本目は完全に読み切って相手が外し、2本目をセーブ。さらに、長谷川は3本目もコースは読んでいたが決められ、1-1で4人目へ。ここで北陸大が外したのに対し、新潟医療福祉大は成功。そして最後も新潟加入内定のFW矢村健がしっかり決め切って、新潟医療福祉大がPK戦を3-2で制した。
■全国で悔しさを晴らすために
(新潟医療福祉大は1年生の二階堂(右)らも成長)
新潟医療福祉大はかつて桐光学園高で指揮を執り中村俊輔らを育てた名将・佐熊裕和監督が指導している。近年は選手獲得にも力を入れており、先述のFW矢村に加え、青森山田高で選手権優勝を経験しているFW佐々木快やFW橋本恭輔が在籍。さらに今年も選手権で優勝した青森山田高のDF二階堂正哉、旋風を巻き起こした尚志高のDF沼田皇海、高校総体得点王のFW小森飛絢(富山第一高)などが加入した。また、脇坂泰斗(川崎F)の弟であるMF脇坂崚平やオナイウ阿道(大分)の弟であるMFオナイウ情滋など、名前の知られた選手が数多く在籍する、北信越の銀河系軍団とも言える存在だ。
それでも全国的にはまだまだ強豪とは言い難い。去年のインカレでは優勝した法政大と2回戦で対戦し、2度リードしながらも逆転負け。王者を苦しめたとはいえ、後半は実に34本ものシュートを浴びた。佐熊監督が「去年のインカレは悔しい思いをしたので、選手たちも全国のモノサシはもっている。プロと練習試合をすることで、モノサシ合わせをしている」と話すとおり、積極的にJクラブと練習試合を行い、強化を続けている。先々週は土曜の深夜に新潟からバスで茨城まで移動し鹿島アントラーズと対戦。そのまま戻ってきて翌日の午前中にアルビレックス新潟と練習試合を行った。それは先週も同じで、準々決勝の翌日には山形に遠征し、モンテディオ山形と練習試合を行ったという。「高校生はそのくらいやるので、選手たちも普通だと思っている」。佐熊監督が涼しい顔でそう語る普段からのタフな連戦で選手たちは鍛え上げられていった。
今回の決勝でも選手層を厚くするために1年生の二階堂や沼田を先発起用。「14、5番手ぐらいまで戦力的に落ちないようにしたい」(佐熊監督)と、どうしても連戦が続く全国大会のトーナメントを見据えて強化を続けている。「まだまだ伸びシロはあるし、クオリティーの高い選手がそろっている。精度と連係をいかに上げていくか」と課題と手ごたえを語った佐熊監督。総理大臣杯では1回戦で九州第一代表の福岡大と対戦することが決まっている。
写真:村田亘
(金沢担当 村田亘)
2019/06/24 12:42