12日の練習後、三好毅典GKコーチと長く話し込む富澤雅也の姿があった。
前節は3失点を喫しての敗戦。第14節・金沢戦から出場機会を得た富澤にとってリーグ戦では初めての敗戦となった。それを受けての三好コーチとの話し合いだったがその行動の背景にあったのはある先輩の姿だった。
「ああいうコミュニケーションは自分にとっても必要。整理できるし、次に向かうための成長に必要なこと。そういう意味ではやっぱり、マスくんの影響を受けているんだと思う」、富澤が言う「マスくん」こそ、その先輩。いまは町田に所属する増田卓也だった。
富澤は増田のことを「一喜一憂しないで常によくなるんだという姿勢、そのための準備とかそういったところは僕にとって学ぶことがすごく多い人」と話す。「あの人は勝っても負けても常に三好さんとコミュニケーションをとっていた。三好さんも出た課題をメインにして練習に落とし込んでいた。そうやって話していくことで何を意識しないといけないか分かっていれば、三好さんのコーチングも試合の中でつながっていく。その試合で生きなくても後々、生きてくるかもしれないし、逆に言えば、もっともっと伸ばさないといけないとなれば時間をかけないといけないのかもしれない。そういうのは常にいい存在を近くで見させてもらった」。いまリーグ戦で連続して試合に出場するようになったからこそ、増田の取り組みの意味がわかるようになってきた。勝って浮かれてもいけないが、負けて引きずってもいけない。「3失点した以上、責任を感じている」、富澤に芽生えた自覚が行動となって表れた。
そんな状況で迎える町田戦、相手のゴールマウスにはおそらく、「追ってきた先輩」である増田が立つことになるだろう。長崎では練習後の居残りジョギングや体幹トレーニングが日課となっていた増田の横には富澤の姿があった。間近でさまざまなことを学んできた先輩が長崎を離れるときにはある約束をしている。「マスくんがここを離れるときにも連絡を取って、『同じピッチに立ちたいね。試合したいね』っていう約束みたいなものを交わした。それが現実味を帯びてきている。試合になれば、そういう感情は関係ないけど実現すれば感慨深いものはあると思う」
16日、町田市陸上競技場で約束の実現は叶うのか。富澤にとっては特別な一戦が待っている。
写真:杉山文宣
(長崎担当 杉山文宣)
2019/06/13 19:39