今季開幕直後に「あらためて『止める・蹴る』の技術を意識して、継続的な取り組みの中でそれらを高めていきたい」とコメントした福岡の井原正巳監督。先に同じような意識の取り組みで川崎Fや名古屋において魅力的な攻撃を具現化したのが風間八宏監督だが、その風間監督の下、川崎Fでフィジカルコーチを務めた経験がある菊池忍フィジカルコーチがいまは福岡にいる。菊池コーチの指導で行われるウォーミミングアップやフィジカルトレーニングでは、ボールを使ったメニューが中心となっている。
その取り組みの中で目に留まったのが森本貴幸のパススピードだ。止める・蹴るの基礎トレーニングとなる、いわゆる『パス・アンド・コントロール』と言われるパスとトラップを繰り返すメニューで見せる森本のパススピードが群を抜いている。ボールの受け手がトラップするのに苦労するほどに強いパスをバシッと通していく。受け手のことを考慮していない乱暴なパスにも見えるのだが、これについて森本に聞くと、こんな答えが返ってきた。
「試合で通るパススピードをイメージしてやっているだけです。練習からやっていかないと試合で出すことはできない。あとは、そういうパスを自分にも出してほしい、というアピールの意味もあります」
実戦的な『止める・蹴る』の技術を磨くためには、実戦でしか通用しないスピードでのトレーニングの積み重ねが必要。森本が速いパスを出す一つの理由がそこにある。
そしてもう一つ別の理由がある。森本の特徴は一瞬で抜け出すプレー。そのプレーをゴールやチャンスに結びつけるには、相手DFの目の前、あるいは、オフサイドぎりぎりの“ある1点”でボールを受けられるかどうかがカギになる。点で受けるためには、パスにスピードがなければならない。遅ければ相手にカットされるだけだ。だから出し手となるチームメイトにはそんなパスを求めたい。それが森本言う「アピール」なのだ。
練習を見る機会があれば、ぜひ森本のパススピードに注目してほしい。
(福岡担当 島田徹)
2018/04/05 18:39