著者:佐藤 勇人(さとう・ゆうと)、佐藤 寿人(さとう・ひさと)
発行:8月1日/出版社:東邦出版/価格:1,500円(本体価格)/ページ:288P
佐藤勇人と佐藤寿人が綴る、波乱万丈の“挑戦”の軌跡
子どものころ、佐藤勇人(千葉)にサインをもらう機会に恵まれた。日付はいまから約15年前の03年、当時の背番号は14。本書と出会い、ふと年季の入ったそのサインを見ると、二人がいまなお現役選手として戦えている理由を垣間見た気がした。
双子のJリーガー、佐藤勇人と佐藤寿人(名古屋)が共著で綴る波乱万丈の軌跡。幼少期から現在に至るまで、要所要所の出来事やエピソードを交えながら、二人の思いが赤裸々に告白されている。勇人と寿人。目線を変えながら進められていく構成もまた、本書の魅力である。
“挑戦”。それこそが本書を通じて描かれている重要な要素だ。優れた身体能力や飛び抜けた才能を持たなかった二人。背の高さや足の速さといった“伸ばすことのできない才能”がストロングポイントになり得るサッカーにおいて、何度も挫折を味わってきた彼らが何を考えてきたのかがうかがえる。二人の歩んできた道は対照的だが、困難にぶつかるたびに刺激し合い、立ち向かってきたその軌跡をたどるにつれ、お互いの存在があって初めて、二人のJリーガーが生まれ、二人の日本代表が生まれたのだと思わされる。
その象徴が冒頭の背番号に込められた思いだった。“14”は01年に寿人が背負い、02年から勇人が背負った番号。「お願いします! “14”を俺につけさせて下さい」。当時は無名に近いプロ3年目、かつてサッカーの道から外れたこともある勇人がクラブに頼み込んで自分の人生を変えていったエピソードに、二人の原点があるような気がした。
人生に限界はない。失敗を恐れてはいけない。勇人に大きな影響を与えたというイビチャ・オシム氏の言葉を借りれば、「サッカーも人生もリスクを冒しなさい」。寿人の言葉を借りれば、「僕は停滞よりも成長、安泰より挑戦を選ぶ」。二人は常に情熱を持って挑戦の道を選んできた。
今季、寿人が名古屋への完全移籍を決断し、勇人は副主将、寿人は主将としてJ1復帰に挑戦している。本書を通じて二人の歩んできた軌跡を知った上で、二人の対決を見ると思うと、一層込み上げてくるものがある。今季最後の名古屋vs千葉は11月11日に予定されている。
(BLOGOLA編集部)
2017/10/15 12:00