練習後、選手たちが続々と帰途に就く中、ただ一人コーチと話し込む選手がいた。時間にして、1時間以上。美尾敦は、勝てないチームの現状を誰よりも考え、自分の意見をぶつけ、人の意見を聞いて回っていた。
「周りの人はどう見ているのかなって」
練習中にも主将の服部年宏と話し込む姿があった。「戦術的な話とくだらねえ話(笑)」と会話の中身を教えてくれたが、それは「勝ちたい」からにほかならない。思えば0-0に終わった前節・岡山戦後、「勝ち以外いらない」と最も責任感を募らせていたのも、この背番号10だった。
攻撃のけん引役はもちろん、前線からの守備もいとわない。そしてチームの問題点を的確に指摘できる希少な存在だ。ただ、結果が出ない。多くの選手から信頼を集めるぶん、彼の思いは責任感に変わる。
「選手もそうだし、サポーターももちろんだけど、いまはとにかく勝ちたい」
美尾の言葉が胸に響いた。
(岐阜担当 村本裕太)
2013/06/05 14:00