ピッチ上には元・柏の選手が7人。(柏U-18出身の仲間隼斗選手を含めると8人)さながら、東京V対熊本は同窓会の様相を呈していました。
そのなかで、「オレのこと、覚えてくれているかな?」と不安がっていた選手がいました。この日、決勝点を奪った深津康太選手です。柏に所属していた06年当時、「ご飯に連れて行ってもらっていた」という北嶋秀朗選手との再会を楽しみにしながらも、「時間がたっていたし、岐阜、町田と遠いところにいたから」と、「忘れられていたらどうしよう」という気持ちになっていたそうです。
しかし、その心配は杞憂に終わりました。
「キタジさん、『よくここまで戻ってきたな。オレもうれしいよ』と声を掛けてくれたんです。試合前から、うれしくなりました」
J1→J2→JFLとチームを変えた後に、そこからはいあがって、J2で上位を走るチームでスタメンを張り続けている深津選手。踏ん張った後輩の姿に、北嶋選手もうれしかったようで。試合中はバチバチと競り合っていた2人ですが、試合前には裏話があったんですね。対戦相手の壁を越えた師弟関係が、そこにはありました。
では、深津選手に関するエピソードをもう一つ。見事なヘディングシュートを決めて熊本戦の決勝点も奪った深津選手ですが、得点後、あまり喜ぶことがなかったのはご存知でしょうか。あれだけ素晴らしいヘディングだったのに、控えめにガッツポーズをした後、ゴール横でごくごくと水を飲んでいました。
「いつ水を飲めるか分からないから、ああいうときにね。でも、あまりにも前にいた巻さんが喜んでいるから、自分のゴールなのかよく分からなくなって」
確かに深津選手の前でつぶれていた巻誠一郎選手は、「なんか自分のゴールのようにうれしくて」両手を上げて走り出していましたけど…。いやいや、まれに見るドンピシャヘディングによる先制点でしたから、もっと喜んで良かったんじゃないでしょうか。そうやって、どこかふわっとしているのも、深津選手が憎めないキャラで、愛される理由です。
(東京V担当 田中直希)
2012/07/25 17:50