エル・ゴラッソ2701号で掲載した、大谷秀和(柏コーチ)インタビュー。その紙面内で、彼と深いつながりのある人々からのメッセージを掲載した。ただ、それはほんの一部分。ここで特別に公開する。
ウェブでの公開に際して、新たに昨季限りで現役を引退して先日、クリアソン新宿のGKコーチに就任した桐畑和繁氏からもコメントをいただいた(就任前の段階)ので、特別に掲載する。
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■玉田圭司/柏 03~05年
一人前のタニとやったら、より自分も生きた
「ボランチの選手だけど、プロ入り最初のころはSBで出ていたイメージがあった。能力を認められてはいたけど、ボランチの層が厚くて、SBで出るようになって。でも、器用な選手だからやれちゃう、というイメージがすごくあった。あのころ、SBからのパスという部分はいまほど求められていないところもあったけれど、タニはそのあたりもすごく器用にやっていた。
プライベートではウイイレ仲間。キタジ(北嶋秀朗)とずっとやっていたんだけど、移籍していなくなってからは、いつの間にかタニが相手に変わっていた。どこでもやっていたね。遠征先にもゲームをもっていって、どちらかの部屋でやっていた。食事の前まで、それから食事が終わってからも。当時、同世代が杉山新くらいで、仲良くやっていたのは後輩が多かった。あまり、選手として認めている人はあまり仲良くできないんだけど、タニのほうから自然と歩み寄ってくれたのかなと思う。
中盤で一緒にプレーもした。自分の能力だけでなくて、頭でサッカーができる。すべて平均以上のプレーができて、その能力を一番自分が把握しているのが強み。それが選手としてのプラスアルファになっている。周りが何を考えているのか、こうしたいんだろうなというのを考えながらプレーできる選手だった。タニは、キャプテンになるまで成長した。いつの間にかバンディエラの立ち位置になっていて、もう柏を知り尽くしている人だと思う。
たらればを話すのは好きではないけれど、タニとはもっとながくやっていたかったし、一人前のタニとやったら、より自分も生きたと思う。代表に入ってもおかしくない存在で、同じチームでほとんどやれず、肌で感じることができなかったのが残念。外から見ても、成長をすごく感じた。結果も出し続けた。(中村)憲剛に似ている感じかな。日本代表の監督が誰になったかによって、選ばれるかどうか決まっていたような選手かもしれない。好んでいる監督ならば間違いなく呼ばれていただろうし、オシムさんなんかは好きだったんじゃないかな。
指導者同士で戦うこと?あるかもしれない。面白いことを考えられるタニのような選手が監督にならないといけない。指導者は世代交代が急務だし、そういう人に場を与えるクラブが出てきてほしい。
現役生活、お疲れ様。同じチームしか経験せずに、第一線でやれた人は一握りの中の一握り。尊敬に値します。培ってきた経験を次の世代にうまく伝えていく能力はあると思う。それをすべて伝えられるように、今後の人生を楽しみにやっていってほしい」
■北嶋秀朗(クリアソン新宿)/柏03年、06~12年
タニを守ってくれて、ありがとう
「(自分にとって大谷秀和とは?)キャプテン、だよね。『タニが話すから、みんな聞こうよ』と自分も周りに話しかけていた。年下だけど、相談もしていたし。いつも冷静であり、レイソルにとって特別な人。自分がレイソルのことをどれだけ語るよりも、タニが過ごした時間のほうがすべてなんじゃないかとも思う。『大谷秀和がレイソル』だから。
(自身は柏を去る際、サポーターに『レイソルを守って』と話していたが?)タニがレイソルで引退できたのも、いろいろな人の支えがあったから。やりたくてもできない人もいる中で、せめてタニはレイソルで引退させてほしいと思っていた。だから、『タニを守ってくれて、ありがとう』。レイソルにも、サポーターに愛されたことがよくわかる最後のセレモニーだった。それに応えるスピーチも素晴らしかった。レイソルとタニの関係はハッピーなもの。こちらが幸せを感じたようなセレモニーだった」
■近藤直也/柏 03~15年
最高のサッカー人生だったと思う
「タニは1個下で、ユースのときからずっと一緒だった。だからといって後輩という感じでもなくて、同級生のような存在。性格は違うし、普段から仲がいいわけではないけど、サッカー観などは似ているものがある。自分たちがトップに上がったとき、在籍していた選手の質も高くて、しばらくは出られないと思っていた。そこで(若手を登用する)マルコ・アウレリオ監督になって、(菅沼)実が出始めて、そのあとにチャンスをつかんで、結果を残したのがタニ。それに自分も続くことができた。
しっかりとした技術があった上で、周りを見て、全体のバランスがとれる。人間性を含めて、どんな監督がきても信頼された。タニが主将を任されて、そこでどうしたらいいのかを考えた結果だと思う。けがのことや、代表と縁がなかったことはあったかもしれないけれど、ユースの頃から見ている自分からすれば、最高のサッカー人生だったと思う」
■深津康太(町田)/柏 06年
大谷はやっぱりすげえな
「習志野高から流経大柏高に転校して、大谷とは同じクラスになった。男ばかりのスポーツクラス。大谷はみんなと仲良くやっていた。大谷みたいに、あんなにみんなと和気あいあいとしゃべれるやつってそんなにいない。高校からずっといいヤツ。当時、『柏ユースから流経のサッカー部に引き抜こうぜ』という話になって。でもプレーは見たことがなかったから、『どんなもんなの?』って。それで国体の千葉県選抜で一緒にプレーしてみたら、マジでうまかった。国体では優勝して、大谷はレイソルのトップに上がって、バンバン活躍していった。『大谷はやっぱりすげえな』という感じ。
一度、柏に半年だけ在籍したけど、天と地ほどの差があった。大谷みたいにはなれないし、悔しいとも思わなかった。やっぱり、『大谷ってすげえ』。一緒にサッカーができてよかった。それで最後までレイソルでやったんだから、尊敬しかない。見習わないとなと思って、ここまでやってきた。(深津は今季でプロ21年目。町田のレジェンドになったが?)自分はそう思っていないけど、周りから言われるのが一番うれしい。それは大谷もそうじゃないかな。大谷、お疲れ様。また一緒に、どこかで」
■小林祐三(鳥栖スポーツダイレクター)/柏 04~10年
≒だから、来年からのレイソルが想像つかない
「年齢も1個しか違わない。7年間で二度の降格、昇格も一緒に味わった。平たい言葉になるけれど、苦楽をともにした数少ない選手。自分が移籍してからは、いい刺激をもらうライバルになった。かなり高い次元でそれぞれを認め合っていたと思っている。自分が苦手な部分なんだけど、タニくんはマメに連絡がくれるから、かろうじてつながっているのかも。互いの存在に恥じないような言動、プレーをしようとしていた。そういうのはサッカー界でも稀有な存在で、これからもそれは続いていくと思う。えっと…、これが自分の思いだけだったら恥ずかしい(笑)。
タニくんは、自分にないものをもっていた。でも、『パンゾーはこういう部分をもっているからね』と、タニくんも言ってくれる。頼れるチームメートだったけど、相手にしてみると、思っている以上にレイソルの中での彼の存在は大きかった。だから、来年からのレイソルが想像つかないくらい。レイソルと彼は、ニアリーイコール(≒)。だから、これからどうレイソルを変えていくのかに、正直興味がある。おこがましい言い方をしているけど、引退してからのキャリアは2年先輩なので(笑)。上から目線でいかせていただこうかな。期待している、と。とはいえ、04年に寮から出て暮らすとなったときに引越し代がもったいないということで、タニくんの車に自分の荷物を乗せて運んでもらった恩は一生忘れません。『1、2往復で終わる』と言ったのに、4往復もしてもらったので(笑)」
■澤昌克/柏 08~13年、18年
キャプテンタニ、思い出がいっぱいだよ
「キャプテンタニ、長い現役生活お疲れ様。まさかっちゃんこと、澤です。ペルーからも、ハイライト動画やメンバー表をチェックしていました。メンバーに入らなかった期間が長くなって、ケガなのか、体調がよくないのかなと気にしていました。日本の主要全タイトルをともに獲れたことはすごくいい思い出として残っています。優勝した天皇杯の準々決勝・大宮戦、いろいろあったあとの後半で逆転劇したね。思い出がいっぱいだよ。自分がDFを背負ったとき、常に目の前にいてくれたのがタニ。絶対にミスしないで、そこでタニに渡すこと。流れを止めないことを必死に考えていました。本当に、すごく心強かったです。次のキャリア、すごく楽しみにしています。頑張って!」
■栗澤僚一(柏コーチ)/柏 08年~
苦しい時もいいときも、ずっと隣で
「苦しいときもいいときも、ずっと隣でプレーしてくれた。たくさんタイトルを獲った。何も言わなくてもわかるような、隣にいて心強い存在。だから、すごさもわかる。周りの選手の性格なども踏まえて、瞬時にいま何が必要かを判断して実行に移せる。その力が抜きん出ているからこそ、ずっと試合に出られたんだと思う。意外と攻撃センスもあって(笑)、得点感覚もある。バランスをとるタイプと言われるけれど、全体を把握できないとできない。それはゲームをやり続ける中で大事なことで、いてくれると助かった。自分ももっとやらなければならないといけないと思った。何より、安定して力を出せるというのが一番。どんな年齢でも、一発本番でもできる。そのための準備ができている。そういうところを一緒にやってきた選手は感じてほしい。
(一番長くコンビを組んだベストコンビ?)そういってもらうとうれしい。獲ったタイトルは、現役を終えてからも残る。一緒にやれて、たくさん獲れてよかった。今度は自分たちが選手に伝える側(コーチ)になった。伝えられる人がいるというのは、レイソルにとっては本当に大きいこと。タニが発信してくれれば、確実にチームの成長につながる。過去は過去だけど、レイソルってこういうクラブと知っている人がいるのが大事なことで。でも、昔のことやっていればいいわけでもない。これだけの試合数に出られたのかは事実であり、秘訣があるわけで、そういったものは自分もそうだけど、経験はつなげていかないといけない。自分に厳しく、周りにも厳しいのが自分で、自分に厳しく、周りにやさしいのがタニ。選手を見る力はそれぞれ違うし、アドバイスするポイントも違うはず。でも、その数が多ければ多いほどいいことで選手にとっていいこと。個人的に、タニが何を伝えるか気になっています」
■菅沼実(日体大柏コーチ)/柏 02~10年
自分のアニキ。絶対にいい指導者になる
「JYに入ったときの1個上。東武野田線でよく一緒に帰っていた。サッカーの話もよくした。自分のアニキという感じで、ピッチでも後ろにいつもいてくれた。中1からだから、長い関係。自分がブラジルに移籍していくときも、『頑張ってこいよ』って香水や勝負パンツをくれて。移動用の靴もくれた。それがすごくうれしくて。大事にとっておいて、愛媛でもいつも履いていた。
最後の試合、セレモニーはスタジアムで見た。やっぱりタニくんがピッチに入ると変わるよね。でも、『そこでシュート打たないでパス出すの?』っていう場面もあった(笑)。自分だったら絶対にシュートしている場面。より可能性が高いから、とパスを判断したんだと思う。
いま、自分は子どもたちに『どんなサッカーや監督になっても、試合に出続ける選手になろう』と言っている。それってタニくんのこと。あのメンタリティーと、考え方はすごい。技術もある。去年も1,2回かな、指導者のことを話そうと言われて会ったけど、逆にこちらがいろいろ聞いちゃうというね…(笑)。性格的もマジメで、絶対いい指導者になると思った。自分と違ってプロを相手にした指導になるけれど、すでに信頼されている存在で、より近い距離で選手と接する形になると思う。これから、レイソルがさらに強くなるんじゃないか。ボクもまた、見に行くし話をしに行きます」
■茨田陽生(湘南)/柏 09~16年
タニくんくらいの存在に出会えていない
「ピッチ内も、ピッチ外でも、自分のお手本。最初は、ただただ『すげえ』と思って見ていた。そこから自分がいくつかのチームにいって、30歳を越えてみて思うのは、素晴らしい先輩はいたし、参考になる人はいたけど、自分がいまタニくんぐらいの存在は出会えていないということ。すべてが参考になる人だった。タニくんにいろいろアドバイスしてもらって、いまがある。『ありがとう』という気持ち。しかも、いい評価もしてくださっていると聞いてもいるので(笑)。最後、セレモニーの場にいれられたことは一生の思い出で、幸せでした」
■桐畑和繁(クリアソン新宿GKコーチ)/06~20年
宮城リョータみたいな感じなんです
「こういうコメントと言われても、正直なところ、自分なんかでいいのか、おこがましいです…。今でも、会うとなんか緊張するんすよね。自分の性格上、あまりそういう先輩はいないんだけど(笑)。やっぱりタニくんは僕らのキャプテンで、ピッチにいるだけで、出てくれるだけで全然違う。あの最後の試合(昨季最終節の湘南戦)もそうだったじゃないですか。スラムダンクの山王工業戦、ラスト少しのところでチームを落ち着けたあの宮城リョータみたいな感じなんですよね。タニくんの一つのトラップだけで、フッと全体が落ち着けるんです。普段は、周りとも無駄につるむようなことはなくて、いい距離感をとってくれる。最後のセレモニーもかっけー、でした。カンペなしであれだけしゃべれるんですからね」
■中村憲剛
レイソルを破るには、彼を破らないといけなかった
「同じバンディエラ?いや、ボクとは違う。彼はユースからずっとだから、本当にバンディエラ。何度も対戦したけれど、頭脳戦ができて面白かった。対戦するのがイヤな選手で、本当にめんどくさかった(笑)。そういう表現をする人はそういないんだけど、だからこそ、素晴らしい選手だったということ。レイソルを破るには、彼を破らないといけない。浦和でいう阿部ちゃん、ガンバのヤットさん(遠藤保仁)、マリノスの俊さん(中村俊輔)、鹿島のミツさん(小笠原満男)と同じ。選手の中での評価がすごく高い選手。賢くて、奪う力もあり、キャプテンシーもある。それに人間的にしっかりしている。だからこそ、愛されるキャプテンだったんだと思う。最後にけがをしてしまって苦しかったと思う。ちょっとかわいそうだった。そのときの気持ちも、優勝も、昇降格も、クラブW杯も経験して、それをこれからは指導者として伝えていくんだと思う。どこかで会うと思うし、また駆け引きが始まるのかな。サッカー界は狭いので、また会えたら。旅行したシンガポールでばったり出会ったミラクルがあったので、これは続く縁だなと思っています」
(BLOGOLA編集部)
2023/01/27 01:45