今週末より、横浜FM、神戸、浦和とACL組との“勝負の3連戦”を迎えるFC東京。
アルベル新体制の始動から数カ月が経ち新たに見えてきた景色、同期との関係性、連戦への意気込みなどを20年にともに大卒で加入した安部、紺野の若き二人に語ってもらった。
聞き手:須賀 大輔 取材日:3月29日(火)
―大卒同期加入のお二人ですが、これまでに対談する機会はありましたか?
安部「1年目のときにやったことあるよね?」
紺野「あったね。プロになってすぐのときだよね」
―お互いのことを知ったのはいつごろですか?
安部「話すようになったのは大学選抜のときだったよね?」
紺野「そうだね。2年生の冬かな」
安部「同じ時期にFC東京のキャンプに参加して、同じタイミングでオファーをもらったんです。そのとき、コンちゃん(紺野)はほかのチームからもオファーがきていて、迷っている状態だったことは覚えていますね」
紺野「正直、当時はすごく迷っていました(笑)。どこのチームにいくかを考えて寝られない日もあったくらいです。ただ、大学4年生になる前にはFC東京にいくことを決めたので、そこから(安部のいる)明治大と対戦するときは少なからず意識していましたね」
―そんなお二人も今季でプロ3年目を迎えます。今季、ここまでをどのように振り返りますか?
安部「アルベル監督の下、昨季までとはほぼ真逆のスタイルのサッカーを目指しています。いまは試合をやっていてもうまくいかないことのほうが多いですが、リーグ戦4試合を終えて3勝1敗と結果としてはいいですし、勝ちながら修正・改善できているのはいいことだと思っています」
紺野「アルベル監督のサッカーは、自分としてはすごくプレーしやすいですね。ドリブルや裏への飛び出しといった自分の特長が出しやすいスタイルなので、本当に楽しくやれています。WGはサイドラインに張ってボールを待つことが多く、そこで受けたときに『相手と1対1の状況だったら全部仕掛けろ』と言ってもらえています。役割がハッキリしているので、頭の中が整理された状態でプレーできています。
チームとしては、最終ラインからボールをつなぐことにトライしている最中で、内容はもっとよくしていかないといけない部分はあります。相手がハイプレスできた際には、どうしてもまだ長いボールを蹴ってしまってつなげない時間帯もあるので、そこで逃げずにつなげるようになれば、さらに面白いサッカーができると思っています。勝てているのはいいことですけど、チーム全体でもっとチャレンジしていけば、レベルアップしたサッカーを見せることができると思っています」
―ビルドアップに関してはすぐに浸透するものではないと思いますが、一方で、前線の選手としてはボールがこないと何もできないもどかしさもあるのではないでしょうか?
紺野「確かにそれはあります。ただ、自分のプレースタイル的にはボールがこないからといってズルズルと下がってパスをもらいにいく感じではないので、中盤の選手を信じて常にいい状態で待つこと心がけています。試合によってはどうしてもボールに触る機会が少なくなると思いますが、そういうときこそ少ない回数で仕事をすることにフォーカスしていますし、そこでどれだけいいプレーができるかが大事だと思います」
安部「インサイドハーフでプレーしていて感じるのは、割り切りの重要性です。前半は相手が元気なことが多く、そこでかなりの勢いでハイプレスにこられると、まだそれをうまくかわすのは難しい部分もあります。ただ、それでもやり続ければ、相手は後半になると絶対に疲れてきます。最近の試合では、前半は難しい展開になってしまっても、割り切ってプレーしながら、後半に相手が疲れてきた時間帯で勝負を仕掛けられればいいと考えています」
―トライ&エラーを繰り返しながらビルドアップを取り組んでいる一方で、ハイプレスが効いているシーンは多くあると思います。
安部「敵陣では『前から行け! 下がるな!』と監督から言われています。ハイプレスに関しては、昨季まで健太さん(長谷川健太監督/現・名古屋)の下で取り組んでいたことと重なる部分も多いので、チーム内で意思統一ができています」
紺野「ハイプレスは、かなり要求されています。まさにC大阪戦(J1第3節/1○0)で僕が決めたゴールはハイプレスが起点になっていて、監督からも『すごくいいゴールだった』と言ってもらえましたし、内容も『前半はかなりよかった』と言われました。3トップがハイプレスのスタート役を担うので、そこで奪ったり、コースを限定して2列目の選手のところで奪ったりする回数が増えてくれば、もっとチャンスは増えていくと思います」
―開幕前のアルベル監督のお話を聞いていると、もっとポゼッションにこだわって“キレイに勝つ”ことを大事にするのかなと思っていました。
紺野「まず、アルベル監督はどの試合も勝つことにこだわっています。いまの結果はそこがかなり大きいのかなと感じています。チーム全員に対して『1対1の局面で負けてしまうと後手に回ってしまうから、そこは絶対に負けるな』と強く言っています。ただ、試合後のミーティングではポゼッション率などを数値化して見せてくれますし、ボールを握ることにもこだわりをもってやっています」
安部「常々、監督は『ボールは常に持っていたい』と言っています。でも、目指すのはボールを持つことではなくゴールなので、そこに向けてどうポゼッションしていくかを大事にしていると感じます。自陣から敵陣に運ぶまでのポゼッションに関してはかなり強く言われていますけど、『敵陣に入ったら自分たちのアイディアでやっていい』とも言ってくれています。あとは、京都戦(J1第5節/1○0)の試合の終わらせ方は褒めてくれましたね。“ボールを保持することが最大の防御”と考えているので、『最後までボールを保持してゲームを終わらせられたことはすごくよかった』と言ってくれました」
―安部選手がインサイドハーフ、紺野選手がWGと同じ右サイドでプレーする時間が多いと思いますが、どんなことを意識しながらプレーしていますか?
安部「主に話すのは守備のプレスのかけ方ですね。高い位置でボールを取りたいので、二人の関係で奪うためにはどうやってコースを限定して、どうすればいいか。そこはプレーしながら話していますね」
紺野「(安部)柊斗の言うとおり、一番話すのは守備のことですね。そのぶん、攻撃は自由にやらせてもらっています。俺がライン際でボールを持ったときに、柊斗が一つ中のレーンを走って裏に抜け、深い位置を取ってくれることもあるので、そこのタイミングについて話すこともあります」
安部「自分は相手のSBとCBの裏に走っていくことが多いですけど、自分が走ることでマークを引きつけられれば、コンちゃんが得意なカットインからのシュートも生かせると思っています。僕のことを使うかどうかはコンちゃんの判断に委ねています」
―お互いの特徴や武器が発揮しやすいスタイルなのだと感じました。それぞれのプレーはどう映っていますか?
紺野「健太さんのときから変わらず、柊斗は特長を発揮していると思います。アルベル監督が目指しているサッカーでは、ハイプレスにいくときにインサイドハーフ二人の運動量はかなり重要になるので、柊斗のよさである運動量やボールを刈り取る力はよりピッチ上で出ていると思います。柊斗を見ていて、『俺は絶対にインサイドハーフはできないな』と思いますよ(笑)。運動量が半端ないです。裏に抜けたと思った数秒後にはもう自分のポジションに戻ってきているので、本当にすごいと思います」
安部「僕からすれば、コンちゃんに頼っている部分もかなり大きいですよ。攻撃がうまくいかない時間帯でも、コンちゃんにボールを預ければ仕掛けたりクロスを上げたりしてくれるので、すごく助かっています。うまくいっていないときこそ、個人技で打開して流れをもってきてくれますからね。大学時代に対戦していたから分かりますけど、コンちゃんを止めることは難しいんですよ。ボールを持ってからのスピードがすごく速くて、追いつくことができないまま前に入られてしまうので、相手からしたら相当イヤだと思いますね」
―今週末のJ1第6節・横浜FM戦から、第7節・神戸戦、第8節・浦和戦とACL組との3連戦が始まります。どんな意気込みで戦っていきたいですか?
安部「絶対に勝ちたいと思っています。自分の中でかなり気持ちの入っている3試合です。マリノスは上位にいますし、神戸は調子がよくなさそうではありますけど、素晴らしいタレントがそろっていて手強い相手であることは変わりません。浦和も調子を上げてきているので、だからこそ、そういう相手に3連勝したいという気持ちは強いです」
紺野「3チームともにJリーグの中でもトップレベルのチームだと思っています。その意味では、いまの自分たちがどのくらいできるのか試される機会にもなると思います。ただ、アルベル監督がいつも言っているように、相手どうこうよりも自分たちのやりたいことをどれだけ表現できるかが大切になります。それが勝つか負けるかにもつながってくると思うので、まずは自分たちに意識を向けてやるべきことをやっていけたらいいと思っています」
―3連戦初戦の相手は横浜FMです。リーグトップクラスの強度と攻撃力を誇り、昨季のJ1第35節で喫した“0-8”の借りを返さないといけないゲームでもあると思います。
安部「昨季の0-8は、自分のサッカー人生の中でも一番の屈辱を味わった試合です。あのピッチに立っておきながら何もできずに終わってしまったので、あの借りを返さなければならないという気持ちはすごく強いです」
紺野「マリノスは3トップがかなり強力です。J1の中でも一番破壊力がある3トップだと思いますが、FC東京も負けていません。僕らのチームにも、ディエゴ(・オリヴェイラ)とアダ(アダイウトン)というJリーグでもトップレベルのアタッカーがいますし、コンビネーションを生かしながら僕も含めた3人で点を決めるような流れを作りたいですね。どちらの3トップが多く点を取れるか。そこで勝敗が変わってくると思います」
―これまでも横浜FMとは真っ向勝負の試合になることが多かったと思います。今季の勝負でも2チームがぶつかり合う真っ向勝負になりそうですね。
安部「マリノスは似たようなスタイルですし、完成度は高いと思いますけど、自分たちも強度の高さでは負けていないと思っています。ポジショナルプレーをしっかりと意識しながら強度を高く保つことができれば、十分に勝機はあると思います」
紺野「個人的には、左SBで永戸(勝也)選手が出てきて欲しいです。普段からよくしてくれている法政大の先輩なのですが、プロになってから対戦したことがあまりないので楽しみですね。マッチアップすることになったらガンガン仕掛けて勝ちたいと思います」
―その後はホームの味の素スタジアムに戻り、神戸、浦和とのゲームが続きます。
安部「神戸戦でもし、拳人くん(橋本拳人)が出てくるのならとても楽しみですね。すごくいい選手であることは誰よりも分かっていますし、FC東京のアカデミーの先輩として目標にしていた選手なので絶対に負けたくないです。一緒にプレーできたのはプロ1年目の数カ月だけでしたけど、激しくプレスにいってボールを奪い取る姿を見せたいですし、拳人くんの前でゴールを決めたいですね」
紺野「地元が埼玉なので浦和戦は燃えるモノがあります。実は両親がレッズファンなので、そういう意味でも負けたくないですね(笑)。埼玉にいる友達にもレッズファンは多いですし、観に来てくれると思うので、いいプレーをして勝てればと思います。それに、レッズとはスタイル的に似ている部分もあると思いますし、勝つことで『FC東京のほうが強い』と証明したいです」
―この3連戦で勝点9を取れたら、かなり自信になると思います。
紺野「いまはチームとしても充実した練習ができていて、戦術面も理解が深まってきていると感じています。練習でやってきたことを試合中にいろいろとチャレンジしながら勝てれば、この先の上位争いにもつながっていくと思うので、自分たちのやり方を貫きながら勝ちたいです」
安部「まん延防止措置も解除されて、たくさんファン・サポーターが駆けつけてくれると思いますし、そのタイミングで味スタで2連戦できることはうれしいです。そして、とにかく何よりも、スタジアムにきてくださるサポーターの方々にいい内容と結果を届けたい思いが強いです。今季、味スタでは全勝を目指していきたいですね」
―最後に、今季にかける思いをあらためて聞かせてください。安部選手は開幕前にお話を聞かせていただいた際には『8ゴール5アシスト』という目標を立てていました。
安部「その目標に変わりはありません。ルヴァンカップ(第3節・湘南戦/2○1)で1ゴールできたことは自信になっていますし、ああいうプレーをすればゴールを取れるのだと証明できました。開幕前よりも、もっとゴールとアシストにこだわっていきたいと思っています」
―紺野選手はいかがでしょう。この2年間の悔しさから、今季にかける思いは人一倍強いと思います。
紺野「1年目と2年目はケガもあって全然試合に出られず、思い描いていたシーズンにはならなかったので、今季は本当に活躍したいです。今季の成績で自分の今後が決まってくると強く思っているので、結果を残せているいまの状態を維持しながら、もっとチームに貢献していきたいと思っています。そして何よりも、ケガなく1年間を戦い抜きたいです」
―以前の取材時には「まだ100%の状態ではない」と話されていました。100%の状態でのパフォーマンスを見られる日が楽しみです。
紺野「自分が思う100%の状態とは、ドリブルを仕掛けたら全部抜くし、ボールをまったく失わない。そしてゴールもアシストもできる状態。それが自分の理想の『100』の状態なので、そこに比べたらいまはまだ70~80%くらいだと感じています。そこに早くたどり着けるように、もっとトレーニングを積んでケアをしっかりやっていきたいと思います」
安部「そうなってくれたら助かりますね。僕もさらに走り甲斐が出てきます(笑)。コンちゃんには苦しいときにゴールを取ってくれる選手になってほしいですし、それができる選手だと思っています」
紺野「そう言ってもらえることはうれしいことです。柊斗はいまでもかなり走っていると思いますが、それをシーズンを通じて続けて欲しいです。ただ、柊斗が8点を取るなら、僕は二ケタは取らないとダメですね(笑)」
安部 柊斗(あべ・しゅうと)
1997年12月5日生まれ、24歳。東京都出身。171cm/67kg。FC東京U-15むさし→FC東京U-18→明治大を経て、20年よりFC東京に加入。J1通算68試合出場2得点。J3通算4試合出場。
紺野 和也(こんの・かずや)
1997年7月11日生まれ、24歳。埼玉県出身。161kg/59kg。C.A.ALEGRE→武南高→法政大を経て、20年よりFC東京に加入。J1通算16試合出場2得点。J3通算4試合出場。
F.C.TOKYO FANZONE にて
「ACL組3連戦エルゴラッソ連動企画」
横浜F・マリノス番記者プレビューを掲載中↓
https://www.fctokyo.co.jp/fanzone/fctokyofanzone/detail/172
(BLOGOLA編集部)
2022/04/01 06:00