著者:井芹 貴志(いせり・たかし)
発行:8月30日/出版社:内外出版社/価格:1,400円(本体価格)/ページ:224P
大津高を日本屈指の名門校に育て上げた智将の“人作り”
古くは06年のドイツW杯に出場したGK土肥洋一(U-18日本代表GKコーチ)やFW巻誠一郎(熊本)。最近ではDF谷口彰吾(川崎F)、日本代表にも名を連ねるDF植田直通(鹿島)。そんな彼らを輩出した公立高校が阿蘇山の麓にある。熊本県立大津高校。数多くのJリーガーを輩出し、高校年代最高峰の高円宮杯U-18プレミアリーグにも参戦する高校サッカー界屈指の名門校だ。しかし、そんな大津高も30年前まではどこにでもある高校の一つに過ぎなかった。93年から指導を行い、イチから鍛え上げた男の存在がチームを全国で戦える集団へと生まれ変わらせたのだ。その名は平岡和徳。現在は宇城市教育長を務める傍ら、いまなお大津高サッカー部総監督として日々、“人作り”に勤しむ智将だ。本書は教育者・平岡和徳がいかにしてチームを鍛え、Jリーガーを育て上げたのかを詳細に記した一冊である。その根底にはサッカーを通じた人間教育があった。
『凡事徹底』。本書のタイトルであり、平岡和徳の教育論を語る上で欠かすことができない言葉だ。意味を辞書で調べてみると、こう記してある。
「なんでもないような当たり前のことを徹底的に行うこと、または、当たり前のことを極めて、他人の追随を許さないことなどを意味する」
ただ、これを15歳から18歳の子供たちに落とし込むことは一筋縄でいかない。希望に満ちあふれた若者を動かすには、心をくすぐるワードや行動が必要である。そのために何を行い、どういう言葉を選手たちに掛けたのか。どのようなチームマネジメントを行い、なぜそのような指導理論が築き上げられたのか。本書には平岡和徳の“人作り”のすべてが描かれており、原点がどこにあるかまで記されている。
サッカー部の指導者と言うよりも、教育者である平岡和徳。本書には読んでいると思わず納得してしまう言動が多々ある。間違いなく、人を育てるヒントになるだろう。サッカーファンはもちろん、人を育てるという立場にいる方々にもぜひ呼んでもらいたい一冊である。最後の1ページを読み終えたとき、今までにない読了感を味わえるはずだ。
(BLOGOLA編集部)
2017/10/08 12:00