著者:岩政 大樹(いわまさ・だいき)
発行:9月16日/出版社:KKベストセラーズ/価格:1,350円(本体価格)/ページ:287P
“サッカーする”哲学者・岩政大樹がピッチレベルで語り尽くす金言集
サッカーを“する側”と“見る側”には決定的な違いがある。
サッカーメディアやファン、サポーターなどは“サッカーを見る側”であり、選手の身体的特徴やプレー、仕草、言動など、目に見えるもので試合を楽しみ、評価する。一方で、“サッカーをする側”というのは当然ながらプレーヤーのことであり、こちらにはまた別の視点、思考が存在する。著者・岩政大樹はこれを「『足が速い』とか『高さがある』とか『技術がある』という(目に見える)ことで特徴を語られると少し違和感がある。それらは本人からしたら、サッカーをするときの前提みたいなもので、そこから何を生み出すかが『サッカーをする』ということ」と語る。
本書は、鹿島で数多くのタイトルを獲得し、タイやJ2、関東1部リーグなどさまざまなサッカーシーンを経験してきた岩政が、徹底的に“サッカーをする”ピッチレベルの視点を貫き、7つの論点と39の考察からサッカー哲学を語り尽くした一冊だ。“見る側”にとっては新鮮な驚きに満ちており、思わず「なるほど!」「そういうことだったのか!」とひざを叩くこと請け合いである。もちろんそれは“見る側”に限らず、本書の帯上でかつてのチームメート内田篤人が「(岩政に)教えてもらった、人に教えたくない秘密が詰まっている」と語るように、“する側”にとってもあふれんばかりの金言が詰まった一冊になっている。
中でも印象に残っているのは論点1考察6、“勝負強さ”に触れた部分だ。そこで岩政はこう語る「勝負所とは、そのときの自分ではなく、それまでの自分が表れる場面。『いつもより大事な試合』があるということは、『いつもより大事ではない試合』があるということ。勝者のメンタリティーを備えた選手は試合に優劣をつけない。勝負強さとはそうしたメンタリティーを持ち、日々の取り組みを続けたときのご褒美みたいなもの」。勝負強さを武器とする鹿島で長年活躍する中でこのような思考を獲得したのか、このような思考を持つ岩政が長年プレーすることで鹿島にさらなる勝負強さを付与したのか、おそらくその両方なのだろうが、無類の勝負強さを誇る鹿島で数々の栄冠を獲得し、DFながらここぞの場面で多くの得点も奪ってきた男の言葉は確かな強度を持っている。
折しも、直近のJ1第27節・鹿島vsG大阪では、鹿島がその勝負強さを見せつけて劇的な逆転勝利を収めた。決勝点は後半ロスタイムにCB植田直通がCKから頭で決めたもの。この勝利で鹿島はまた一歩優勝へと近づいた。この得点を見て、終了間際にFKから岩政がヘディングシュートを決め、優勝に大きく近づく劇的勝利を収めた、08年のJ1第33節・鹿島vs磐田を想起した人も多いのではないだろうか。岩政の哲学、魂が鹿島イズムの中で脈々と受け継がれていることを垣間見せた瞬間でもあった。
これでもかと金言が詰まった一冊。一読することをオススメする。
(BLOGOLA編集部)
2017/10/01 12:00