著者:木崎 伸也(きざき・しんや)
発行:11月11日/出版社:文藝春秋/価格:1,300円(本体価格)/ページ:320P
直撃取材すること28回。本田圭佑とのガチンコ勝負
読了後に、「ナイスゲーム!」と拍手を送りたくなる一冊だ。
本書は『Sports Graphic Number』の連載シリーズを書籍化したものだが、その内容はタイトルにもあるとおり本田圭佑に“直撃”取材を敢行するというものだ。
本田と著者・木崎伸也の真剣勝負は10年の南アフリカW杯後から今年1月まで、28回にわたって繰り広げられる。個と個の激突で際立つのはやはり、本田の“力強さ”。偉人の名言集でも傍らに隠し持っているのではないかと疑いたくなるほど、次々と印象的な言葉が湧き出てくる。その言葉の力こそが本書の最大の魅力だが、それを引き出す著者の姿もまた、本田の言葉に劣らず魅力的だ。
モスクワ、ミラノ、カタール、バルセロナ、ベルギー、ブラジルなど世界中を飛び回って本田を追いかけ、ガチンコ勝負をしかける著者の姿はある意味痛快だ。取材を断られることも、言葉少なに煙に巻かれることもあるが、アポなし直撃を繰り返し、極寒のモスクワで本田を待ち伏せ、時には滞在先も分からないのにリハビリ中のバルセロナへ飛び、公式サイトに掲載された写真と聞き込みを頼りに本人を見付け出すという探偵小説ばりのドラマも披露する。その姿勢は苦境を楽しみ、幾多の壁を乗り越えてきた取材対象・本田の姿にも重なる。だからこそ本田は著者との対峙を、真剣に、けれどもどこか楽しむように受け入れているのだろう。
11月15日のロシアW杯アジア最終予選・サウジアラビア戦。予選突破を占う大一番で先発に本田の名前はなかった。清武弘嗣、原口元気といったメンバーが頭角を現す中、これをもって世代交代とするのか、ついに健全なチーム内競争が始まったと捉えるのか、ここでは言及を避けるが、圧倒的な存在感で日本サッカー界の頂点に君臨してきた本田がまた新たな局面を迎えていることは間違いない。
しかし、逆境こそチャンスと捉える本田だからこそ、これを機に次なる進化形態を見せてくれるのではないかと、つい期待してしまう。本田圭佑が現在進行形で新たな飛躍の準備をしている、いまだからこそ読みたい一冊だ。
(BLOGOLA編集部)
2016/12/11 12:00