「僕自身がプロの厳しさ、大変さを経験しているから、親として素直に喜べたのは、少しの時間だけだったね」
練習の合間に長崎の高木琢也監督がそう呟いたのは2014年の夏、長男である高木利弥が山形に特別指定選手として登録されたときのことである。それから2年、父は長崎で自身の監督キャリア最長となる4年目の指揮を執り、子は山形でJ1でのプレーを経て、いまも山形の左サイドを疾走している。今季のリーグ前半戦で対決したときは叶わなかった親子対決が、6日に行われるJ2第40節・山形vs長崎戦で実現するかもしれない。
高木琢也監督によると、シーズン前に長男との間で親子対決が話題に上ることはなかったという。シーズン合間のオフに、自宅で偶然に会うこともあったというが、「あまりサッカーの話はしないよね。一般的なプロの厳しさや、この世界の難しさを話すくらい」と言い、今回の山形戦前にも「(利弥は)後ろに石川竜也がいる中で、左から良い攻撃のボールを蹴ってくる。クロスは良いものを持っていると思うけど、守備には難点がある」と、その目は指揮官としての視点であり、対戦相手として冷静に分析をしている。
我が子のプロ入りにあたり、心によぎったプロの厳しさ。ほかならぬ高木監督自身がプロとして勝ちにいく今節の山形戦。スカウティングに優れた高木監督は山形の左クロッサーをどう攻略しするのか? そういう点に注目する試合があってもいいのかもしれない。
(長崎担当 藤原裕久)
2016/11/05 13:38