著者:イビチャ・オシム(Ivica・Osim)
発行:9月8日/出版社:KKベストセラーズ/価格:800円(本体価格)/ページ:208P
オシムが語る、加速する時代に立ち止まってみる必要性
この本の語り手であるイビチャ・オシム元千葉・日本代表監督は、現代を「すべてに加速する時代」と定義する。そして、だからこそ「ときに立ち止まって落ち着いて考える」ことも必要だと説く。
『急いてはいけない 加速する時代の「知性」とは』という、ビジネス書のようなタイトルが付いた一冊だが、もともとはオシム氏に聞きたい質問を募集し、それに答えてもらう企画だったのだという。千葉時代の教え子である阿部勇樹(浦和)や水野晃樹(仙台)らが質問を寄せている。また、オシム氏に薫陶を受けたサッカー選手だけでなく、一般の方からの質問も受け付けた。
しかし、オシム氏はそうした質問に一つひとつ答えを提示することはしなかった。質問表を見てしばし考え込むと、おもむろに話し出し、一気に語り尽くしたという。
かつての教え子たちは、人生の師への質問ということで素直に弱みをさらけ出しており、質問自体も興味深いのだが、質問を見たオシム氏は「あなた方はどうしていつも同じ質問をするのか。自分の弱さを告白し、他人に答えを求める」と切り出した。もう答えは分かっているはずだ、そう言いたかったのだろう。
いま、「すべてに加速する時代」=現代に乗り遅れないためにどうすべきか、人々は分かりやすい助言や極論を他者に求めがちだ。自分もその一人である。そして、本書もそんな気持ちで手にしたところ、思いきり冷水を浴びせられた。本当の答えは、与えられるものではないのだ。
なお、オシム氏は決して「すべてに加速する時代」を否定しているわけでない。加速化するほどサッカーも面白くなるし、フィジカル能力を上げるのも難しくはないと話す。問題は“試合後の回復”で、選手のパフォーマンスを維持するための何かを見付けなければいけないと語っている。オシム氏は、いまでも未来を思考することをやめていない。
(BLOGOLA編集部)
2016/10/09 12:02