5得点。こぼれ球を押し込んだものもあれば、ミドルシュートもあり、味方が落としたボールを冷静に流し込んだシュートもあった。浦和の24日のゲーム形式の練習で圧巻のプレーを見せたのは、興梠慎三や李忠成、武藤雄樹などストライカーではない。那須大亮だった。
昨季までの絶対的なレギュラーという立場から一転、今季は出場機会が激減していた那須だが、槙野智章の出場停止や遠藤航の負傷退場、そして五輪で遠藤航が離れていた期間にリーグ戦で出場し、前々節の名古屋戦まで7戦7勝。
しかし、前節の川崎F戦は1-2の敗戦だった。「どういう状況でも結果がすべてだと思っているし、川崎F戦も是が非でも勝ちたかった。結果が次へのチケットじゃないけど、ピッチに立つために分かりやすい答えになるから」。結果を求める気持ちは、レギュラーの座を失ったことで、より強くなっている。
24日の練習ではサブ組に回ったが、那須は何も変わらなかった。ゲームに入る前に笑顔を見せ、大声を出し、ピッチを走り回った。そして前述のとおりの活躍。決してゴール前に張り付いて得点を量産したわけではなく、守備も行った上でのプレーだったことは言うまでもないだろう。本人はリベロではなく「ボランチだったので」と笑ったが、それだけ動き、ゴール前に顔を出したということだ。
「出られないと他人のせいにしたり、『何で出してくれないんだ』という方向に行きがち。だけど、自分がどう変わるかだから。(川崎F戦で)負けたということは、まだまだ成長しろと言われているということ。近い将来の自分にとってポジティブなものにするために、日々からしっかりやらないといけない。日々の一つひとつの練習で結果を残すしかない」
レギュラーで試合に出続けようが、サポート役に回ろうが、「どの立ち位置でもスタンスは変わらない」。そんな35歳のベテランの姿は、槙野が最も尊敬する選手に挙げるように、浦和の選手たちの良い見本になっている。
誰が出ても変わらないサッカーができることを身上とする浦和だが、彼のような選手がいて、熾烈なレギュラー争いがあるからこそ、上位で戦い続けていることもまた、紛れもない事実だ。
(浦和担当 菊地正典)
2016/08/24 15:51