著者:西部 謙司(にしべ・けんじ)
発行:6月3日/出版社:学研プラス/価格:1,500円(本体価格)/ページ:248P
攻略パターンを共有すれば、プレーも観戦も面白い
日本サッカー界の積年の課題である決定力不足。耳にタコができるほど聞き飽きたこのフレーズは、決定的チャンスでシュートを外し、頭を抱える選手の姿を多くの人に想起させるだろう。攻撃的選手の技術不足がその要因となっているのは間違いないが、加えて、そこにはチームとしてゴールに到達するための攻略パターンが不足しているという一因も存在する。
本書が紹介するのは、世界のトップが実践しているゴール前30mにおける29パターンの崩し方である。国内外のサッカーに精通し、戦術読解に長けた著者が、15-16シーズンの欧州サッカーを例に挙げながら、図解付きで攻略パターンを解説する。『ワンツー』、『アーリークロス』、『スルーパス』といった定番のものから、バルセロナを筆頭に欧州のトップクラブが実践している具体的に名前は付いていないが、「なるほど確かにその形はよく見る」といった攻撃パターンまで、その紹介は多岐にわたる。加えて、ただ型を提示するのではなく、「どういった状況で、どこを狙って」という的確な解説と、その形が見られた試合を昨季の欧州サッカーシーンの中からピックアップしてくれており、親切この上ない。
ただ、著者自身が語るように、刻一刻と展開が変化するサッカーにおいて、本書で解説しているパターンをそのまま試合で実践することは難しいだろう。しかし、このパターンを知識としてチームで共有することには意味があるとも著者は語る。「こういう場合には、こういう攻め方がある」という共通認識を持つことで、状況に合致した選択が可能になり、プレーの幅が広がるだからだ。
また、この知識は観戦者の目も豊かにしてくれる。日本代表や贔屓のJクラブの攻撃パターンを知識と照らしあわせて考察することで、試合観戦の面白さがグンと増すはずだ。時には、「あのパターンを使えばいいのに!」と思わず口をつくこともあるかもしれない。
(BLOGOLA編集部)
2016/08/14 12:00