前節の浦和戦(0●1)は、両者の高い技術と戦術が凝縮された好ゲームだった。そんな緊迫した90分の中でも、和やかなシーンが一つあった。
42分、川崎Fの自陣左CK付近で槙野智章とジェシが競り合い、ラインを割った場面。主審の判定は川崎Fのゴールキックだったのだが、なんとも微妙な判定だった。それでも、槙野は怒る様子もなく、無邪気な笑顔を交えながらジェシの肩を組み、何かを語りかけていた。
「あのときは、ジェシが『槙野が触った!』とアピールして、槙野は『ジェシが触っただろ!』と言い合っていて。でもそこでオレは槙野に「いやいやお前触っただろ」と言った。でも映像を見たら、ジェシが触っていましたね(笑)」。その現場を最も近くで見ていた田中裕介はそう証言する。
あの場面、普通であれば一触即発になりかねないところだが、この二人のやりとりが張り詰める緊張感の中に一つの安らぎを与えた。
「アイツ(槙野)はそんなにキレたりしないですからね。見ている人からすればすごく良い光景だったんじゃないですか?」(田中)
槙野は前半開始直後に自らが沈めたFKを取り消されるなど、少なからずフラストレーションがあっただろう。そんな状況下で見せた槙野のアクションに、心から拍手を送りたい。
(川崎F担当 竹中玲央奈)
2014/04/25 20:03