試合後会見で松田監督が「勝敗というのは最終的に気持ちの部分が影響してくる」と語った通り、栃木の忍耐強さに勝点を持っていかれた試合となりました。本紙マッチレポートでは細かく触れることのできなかった部分を、ここで振り返ってみたいと思います。
前節、岐阜に手痛い敗戦を喫した栃木は、メンバーを入れ替えてこの試合に臨みました。岐阜戦後のトレーニングではメンタル面を非常に重要視していたという松田監督に、その采配も気持ちの強い選手を起用した結果なのかと質問すると、「そうです。常にパーフェクトな内容ではなかったが、最終的に結果を持ってこられたのは、メンタルの部分が充実していたから。一番ベースにあるのは、そこの部分だと思います」という答えが返ってきました。
出場停止明けで復帰したパウリーニョ選手を除けば、その狙いが最も顕著に「当たった」のは、菅和範選手だったのかなと思います。大分にとって「あれさえ決まっていれば」という絶好機だった森島康仁選手のシュートを好守で防いだのをはじめ、最後の最後で体を張ってゴールを守り続けました。
一方の大分は、栃木の5本に対して16本ものシュートを放ちましたが、印象としては精彩を欠いて見えました。宮沢正史選手がいつもよりフリーになってボールを散らすことができていたのは良い傾向でしたが、栃木の守備網を突破することはできなかった。途中投入された木島悠選手が栃木のブロックの裏を突き、サイドを深くまでえぐって好機を作りましたが、栃木は終盤になるにつれてさらにラインを下げ、裏のスペースを与えなくなりました。
全体にパワープレーが多過ぎたかな、とも思います。ただし、これは芝のコンディションも影響してくることなので、実際にピッチに立っている選手たちの判断を信じるしかありません。でも少し残念だったのは、シャドーに井上裕大選手を配置した狙いが、この実戦においては十分に生かせていなかったように見えたこと。もっと流れのなかで井上選手の特長を生かす攻撃ができていれば、と感じました。ここが為田大貴選手になるのか井上選手になるのかで攻撃の性格が変わってくると思うので、次節の采配がどうなるかというところ。
もつれまくった昇格争いの緊張状態が長く続き、上位陣に疲れが見えはじめているようです。ここまで来たら、最後は本当に気持ちの問題なのかなと思います。精神論は好きではありませんが、いかなる戦術を遂行するにも、まずは勝利への欲求が根底にあることが前提。
いい内容だったと振り返ることができるのは大抵、立ち上がりから激しくプレスし、気迫を見せた試合です。今回も序盤、森島選手がインターセプトから自らシュートにつなげるなど、見応え満点のシーンがありました。今回は相手の堅守にその流れを断ち切られましたが、ワンプレーの気迫がチーム全体に伝わり、ゲームの流れを引き寄せることができれば。絶対に負けられない次節・町田戦が、そんな試合になることを願います。
最後に、古巣対決を楽しみにしていた河原和寿選手が、今回はメンバー外になってしまったことは、大変残念でした。彼が大分を離れてからも多くの大分サポーターに愛されているのは、終盤に足がけいれんするまでチェイスし続ける姿が、見る者の気持ちを強く動かしたからでしょう。昇格争いもクライマックスを迎えようとする今、チームやその周辺の心をひとつにできるのは、ああいう姿なのだろうな、と、やはり“戦う気持ち”について考えてしまうこととなった一戦でした。
(大分担当 ひぐらしひなつ)
2012/09/26 14:49