いまだ今季の結末が見えない大混戦のJ2も、残すところ8試合。今まで以上に緊張感の増す日々へと突入して行きます。今週末の第35節、大分がホームに迎えるのは現在9位につける栃木。日本屈指のゾーンディフェンスの使い手・松田監督が仕込んだ、堅守のチームとの対戦です。栃木は大分に続き、甲府、京都と上位との直接対決3連戦。プレーオフ圏内へ向けてじりじりと勝点差を詰めており、非常に高いモチベーションで乗り込んでくると思われます。
この対戦をひときわ格別な思いで迎えようとしているのが、為田大貴選手です。実は為田選手には、郷里・長崎出身の大先輩にあたる松田監督との間に交わした約束があるのでした。
2006年初夏。当時中学1年生だった為田選手は、小学4年まで所属していた「高尾SSS」という少年団の園山監督に呼び出されました。そこで引き合わされたのが、当時、福岡の監督を解任されたばかりの松田監督。園山監督と昔から親交のあった松田監督が、園山監督の経営する飲食店に食事に訪れたときのことです。
松田監督はサイン色紙を為田選手に授け、こう言いました。「いつか一緒にサッカーをやるかもしれないし、敵として戦うかもしれないね」。
それから6年。松田監督は神戸の監督を経て栃木の指揮官となり、為田選手は町クラブ「長崎アシスト」から大分U-18を経てトップ昇格しJリーガーになりました。今季第2節、アウェイでの前回対戦では為田選手はメンバー外だったため、出場すれば今節が初めての対戦となります。松田監督の言った通り、今まさに敵として向かいあう二人。
田坂監督の手によりボランチとして開花し、ここ最近はアグレッシブなインターセプトから攻撃の起点となって、持ち前の負けん気とテクニックの高さを輝かせている為田選手。第33節京都戦では、待望のプロ初ゴールも挙げました。その成長ぶりを、「難攻不落」と言われる栃木の堅守を打ち破ることで、松田監督に示してもらいたいところです。
為田選手が座右の銘とする「一蹴入魂」。これこそ、6年前にもらった松田監督のサイン色紙に書かれていた言葉なのです。
(大分担当 ひぐらしひなつ)
2012/09/20 21:15