第28節は愛媛FCとの四国ダービーを制し、勝点を37に伸ばした徳島。逆転でのプレーオフ進出に向け、とにかく勝利を重ねていくしかない状況です。「これからの1戦1戦は、トーナメントに挑む気持ちで戦う」と、小林伸二監督も話しています。
ここまでの戦いを振り返って、小林監督は、「3月、4月にこぼした分が痛かった。そこで出遅れた分が、今の上位との差となっている」と、まずはスタートダッシュに失敗した序盤戦を悔やみました。ただし、5月以降は上位陣と遜色ない成績を残しており、戦い方にも手応えを得ています。まず、“小林戦術”の肝である守備については、
「だいぶ落ち着いてきた。一時期に比べると、失点もファウルも随分と減った。ボールを回されても、前で回されている分には大きな問題ではない。1人がプレスをかけた後、“ここに入ってくるから取りに行く”、“そこで取れないなら、次はここで取る”、という3段階くらいの守備のグループ戦術はできてきている。以前は、『ボールに行け』と言っても、行っても取り切れなかったり、取れないから下がり過ぎてしまったり。でも、そこで個で取れなくても、行って限定すれば、次に取れる。1人で取れなくても、グループで取ることはできる。ボールを取ることは、“戦術”だから。1人が元気よく行っても取れない。もちろん、能力が高ければ取れることもあるけど、取れないか、ファウルになってしまう。行ったあと、相手にさばかれても戻るとか、次の人が行くとか、その繰り返し。地味な作業だけど、それを繰り返すことで、相手にとってみれば、“隙がないな”という風になる。今の守備は、決してウェイティングだけの、ブロックを作って相手のミス待ちの守備ではない。チャレンジして、奪うことを狙いとしてやっている。ただ、ボールに強く行くことは、日ごろの習慣でもあるので、体に染み付いていないと練習だけでもヘロヘロになる。当たり前としてそういう守備ができていかないと、より強固な守備にはならない。もっともっと個人戦術とグループ戦術がかみ合って、意図的にボールを取り切れるようになると、レベルは上がっていく。あとは、縦パスを入れられたり、裏に走られたり、組織が崩されかけたときの応用編にも対応していくことが課題」と話しています。
3月、4月は、「スライドができない」(小林監督)という言葉も多く聞かれていましたが、5月以降、ぱったりとその言葉は出なくなりました。
守備の安定が図られていくにつれ、攻撃力アップにも取り組み、5月以降はグループでの崩しにも力を入れています。その辺りについては、
「裏を狙う意識や、広げてサイドから崩す意識だけでなく、ボールを回しながらボランチが縦に入れる意識も、だいぶ強くなってきた。そこで、トップでクサビが収まれば、後ろから絡む選手は前向きにボールを持てる。飛び出す力やスペースに出る力が増す。ボールは“メッセージ”だから。横、横のジャブの中から縦のストレートを狙う意識を持っておかないと。ウチの選手は裏へ元気よく走る選手は多いけど、一瞬の駆け引きで裏を取ったり、相手の視野の外から飛び出していったりする形も増やしたい。でも、そういう練習も重ねてきたので、選手同士、互いの特長は理解でき始めている。練習をやっていても、だいぶ楽しくなってきたんじゃないかな(笑)」と話しています。
少し長くなりましたが、小林監督が練習場で語られていることの、一端です。チーム力がじわじわ上がっていることは試合を通しても確認できるだけに、今季が残り14試合で終わるのが惜しいですね。ひとつでも多く勝って、上位との差を詰めたいものです。
(徳島担当 小田尚史)
2012/08/17 21:31