東日本大震災、そしてその後の原発事故以降サッカー場としての機能を失っていたJヴィレッジだったが、多くの人の尽力により昨年7月から再始動。そして、震災後初めて、JヴィレッジスタジアムにてJリーグクラブを招いての有料試合であるJヴィレッジ再開記念「福島ダービーマッチ」が24日に開催された。対戦したのは、明治安田生命J3リーグの福島ユナイテッドFC(以下福島)と、今季は東北社会人リーグ1部で戦い、来季のJFL昇格を目指すいわきFC(以下いわき)。両チームのサポーターやJヴィレッジの再開を祝うファンら2,183名もの観客が集まり、スタジアムは熱気に包まれていた。
試合前の出店には多くの人が行列をなし、中でも日本代表専属シェフの西芳照さんが店頭に立って販売した福島野菜カレー(500円)には大行列ができた。試合前には日本女子代表やベルマーレ平塚/湘南ベルマーレで監督を歴任し、現在Jヴィレッジ副社長を務める上田栄治氏が祝辞を述べ、お祝いムードの中、試合が行われた。
試合は「福島がしっかりポゼッションをしてくるのは分かっていて、これから完成度を高めていくという状況。そこで前線からプレッシャーをかけてなるべくゴールに近いところでボールを奪い、前にボールを運ぶゲームプランでした」といわきの田村雄三監督が語ったとおり、球際の強さと速攻でいわきが福島を圧倒し5-0で快勝。MVPには柏レイソルアカデミー出身で、仙台大、東京ユナイテッドFCでプレーしたFW宮澤弘が選出された。いわきは選手権優勝の青森山田高から加入したMFバスケス・バイロンも途中出場し1アシスト。「アシストできたのはよかったが、点をとれなかったのが課題」と振り返った。
一方の福島はFW樋口寛規、GK堀田大暉ら主力選手が軒並み体調不良で出場を回避したことや、大卒の若手選手が増えたこともあり、パスミスからボールを失い、失点を繰り返すなど課題の多い内容だった。松田岳夫監督は「激しいプレスの中でもボールを動かし、相手を動かすのが狙いでしたが、思っていたことの半分もできませんでした」と自分たちのスタイルを貫かせたが、大敗に終わったことを踏まえ、課題の修正に臨む構えだ。キャプテンのDF阪田章裕は「大敗してみんな悔しい思いをもったと思いますので、それを今後の結果につないでいくことが大事」と前を向いた。
福島の松田監督が「サッカーに携わる人間として、Jヴィレッジが再興して多くの皆様の前で試合ができうれしいですし、喜びをもって試合に臨みました」、いわきの田村監督も「結果どうこうよりもJヴィレッジでJ3の福島とダービーができ、たくさんのお客様が来てくださったことが一番大事。今日の試合を開催できてよかったです」と語ったとおり、何よりこのJヴィレッジで再びサッカーの有料試合が行われ、賑わいが戻ったことが最も意義深いことであろう。8月10日には明治安田生命J3リーグ第20節・福島vs藤枝戦が行われることも決定済み。復活したサッカーの聖地を舞台に、福島のサッカーがますます盛り上がることを期待したい。
MVPを受賞したいわきFW宮澤弘に賞品の福島県産の米をプレゼントする上田栄治Jヴィレッジ副社長
写真:小林健志
(福島担当 小林健志)
2019/02/25 07:00