15連戦の締めくくりとなる第15節を敵地で、札幌は神戸と戦う。ルヴァンカップこそ敗退となってしまったものの、リーグ戦は現在11戦負けなしを継続しており、どの選手も口々に「勝って、いい形で中断期間に入りたい」と発する。最後の力を振り絞って勝点3を得るつもりだ。
中でも4月の月間ベストゴールを受賞した好調のFW都倉賢にとっては10年から4シーズン在籍した古巣が相手となる。昨季の同カードは神戸ユニバでの開催だったこともあり、「札幌にきてからノエスタで試合をするのは初めてなので、楽しみ」と心待ちにしている。
今季は2度のバイシクルシュートでの得点を突き刺したり、肝心なところで決勝点を奪う勝負強さを見せたり、視察した代表チームスタッフが名前を挙げてパフォーマンスを称えたこともあった。それだけに、サプライズ的に代表チームの“ラージグループ”入りを果たすのではないか、という見立てをするメディアもあった。
残念ながら18日に発表されたガーナ戦のメンバーの中にその名前はなかったが、かねてから「非現実的な話。W杯は観るものなので(笑)」と達観したように笑っていた都倉。本人の中に特別な感情は、ないのかもしれない。それでも、少なからず期待を寄せたファン・サポーターはいただろうし、代表チームのスタッフがその名を口にしたことは事実。観戦者ではなく、ロシアW杯を迎える日本サッカー界をしっかりと沸かせた一人であったことは間違いない。
05年に川崎Fでプロ入りを果たしながら、08年には期限付きで群馬(当時の名称は草津)に移籍。「完全に構想外。川崎Fに戻れることはないと分かっていた」(都倉)が、完全移籍となった翌年にその群馬で23得点を挙げ、J1の神戸からのオファーを勝ち取った。
その後も、欧州移籍にチャレンジした。それには成功こそしなかったものの、新天地として決めた札幌で、こうして活躍を果たしている。何かがあればその都度、自らの力ではい上がってきた。
バイシクルシュートを叩き込むプレースタイル同様に、コメントも特徴があるし自らのラジオ番組をもつなど、SNSでもさまざまな発信をしている都倉。活躍してもなお、SNS上では心ないメッセージが届くこともあるというが、それでも継続しているのは、ファン・サポーターを含め、周囲を盛り上げるためだ。
もちろん、日本代表チームに名を連ねることはサッカー選手にとっての大きな目標の一つであるだろう。だが、それを果たせなくとも、サッカー界を盛り上げることはいくらでもできるし、それが日本サッカーの強化にもつながるはず。その意味で言えば、都倉は現時点では日本代表チームの選手ではないが、日本を代表するサッカー選手の一人だと思う。
かつてはい上がり、プレーをしたノエスタでも、きっと多くのファン・サポーターを盛り上げることだろう。
(札幌担当 斉藤宏則)
2018/05/19 18:30