冷静に言葉を選んで語りながらも、その目の奥に熱い気持ちがあるのは明らかだった。今季から完全移籍で浦和に加入した岩波拓也が、昨季まで所属した神戸と対する。JYから10年過ごした「特別なチームであり、街」の神戸と11日、浦和が相まみえるのだ。舞台はノエビアスタジアム神戸。「一番好きな神戸と戦えるという、その姿を何回も想像してきた」岩波だけに、期する思いは人一倍だ。
まだ、彼に浦和でのリーグ戦の出場はない。ルヴァンカップ3試合で先発フル出場を果たしているが、槙野智章やマウリシオからレギュラーの座を奪えてはいないのが現状だ。それでも――、今季はじめてリーグ戦の連戦となる今節、先週の4日にルヴァンカップ広島戦で激しい守備で無失点に抑えた彼だけに、出場の期待はふくらむ。
大槻毅監督は「野心を持った選手を使いたい。浦和に来て自分がプレーをしたい、みんなにプレーを見てもらいたい、チームに貢献したい、というのは誰なんだというところ」と、広島戦後に話していた。その意味で、岩波は神戸戦に懸ける思いは誰よりも強い。指揮官の頭の中に、彼起用の選択肢はあるだろう。9日の非公開練習後、「みんなと会えることが楽しみだけど、もうチームメイトではない。ピッチに入れば友達ではないし、つぶさないといけない立場」と語気を強めた。
とはいえ、彼には対峙したい特別な選手がいる。「(チョン・)ウヨン。(中国のクラブから)神戸に帰ってきてすごくうれしいし、仲良くさせてもらっていた選手。いまも連絡を取り合っている。こうして対戦できるようになるとは、と縁を感じている」。岩波が神戸で背負った『5』を着ける盟友との対戦に、胸躍らせていた。ノエスタのピッチに、彼の姿はあるか。
(浦和担当 田中直希)
2018/04/10 11:24