前節、清水戦では途中交代で今季リーグ戦に初出場し、アディショナルタイムに同点弾を挙げ、アウェイでの勝ち点1獲得に貢献した鳥栖の水野晃樹。しかし、水野に安心する様子はない。そこにあるのは危機感だった。「けが人が戻ってきてまたベンチ外になったら意味がない。そうならないために結果を残すしかない」と、次の結果へどん欲に視線を向けている。
鳥栖加入後は我慢を続けてきた。移籍先が決まらず、コンディションが落ちた中で沖縄キャンプ中のチームに合流。ほかの選手たちがすでにシーズンを戦うコンディションを作り上げている中、結果を出さないといけない焦りを必死に押し殺した。「自分の開幕は4月から」と話し、練習が終われば鎌田大地や太田徹郎といった選手たちと追加でジョギングを行い、体を絞ってきた。そして、4月に入ると我慢して続けてきた努力は実を結ぶ。「キャンプ中と比べて体重は6kg弱、体脂肪も5%くらい落ちたかな。いまの体脂肪は8.5%」と自身で明かしたように顔つきも体のシルエットも加入当初とは明らかに見違えた。
鳥栖加入後、初のリーグ戦出場で奪った得点を「我慢が大事ってことですよ。この年齢になってやっと我慢ができるようになったから(笑)」とおどけながら振り返った。しかし、その言葉も決して冗談だけではないだろう。若いころは刺々しさもあれば、「噛みつくくらいだった」と自分でも振り返る。31歳になったいま、「反発心がなくなったら終わりだと思っている」と話す一方で、「それでも我慢して出場機会を狙っていればこうやってチャンスは来るんだなとあらためて分かった。どんな状況になっても我慢強く準備するだけですね。若手の良い手本になっていけばベストでしょ」とも話す。
年齢を重ねて水野が得た我慢の重要性。我慢が生んだ水野の得点は勝ち点1だけでなくチームにとってさらなる価値をもたらしたのかもしれない。
(鳥栖担当 杉山文宣)
2017/05/16 20:36