FIFAの大会はU-15からなのでW杯という名称こそないが、ダノンネーションズカップ(フランス)はFIFA公認のU-12の国際大会として世界32カ国で予選が行われており、小学生年代のW杯と呼ばれる国際大会。過去、日本代表はU-12、13日本選抜や柏U-12、東京Vジュニア、川崎F.U-12、レジスタFC(埼玉)、横浜FMプライマリー、横川武蔵野FCジュニア(東京)が出場してきたが、今年度は強豪クラブの育成組織でも、人口が多い地域でもない甲府U-12が国内予選で浦和ジュニアや横浜FMプライマリーを破って出場した。
本大会ではオランダ、ポーランド、アルジェリア、フランス、アルゼンチン、スペインの代表チームを破って決勝に進出。98年のフランスW杯の決勝会場である、サン・ドニの8万人収容のスタッド・ド・フランスで行われた決勝ではドイツ代表のドルトムントU-12と対戦。結果は0-0の末、PK戦で敗れたが、地方クラブのアカデミーが起こした快挙と言っていい結果。西川陽介監督は、「初戦はポゼッションのイメージがあるオランダだったが、キックオフと同時に(ロングボールを)蹴ってくることに驚いた。準決勝のスペインはわれわれが先制すると、丁寧にボールをつないでいたのが一転してゴール前に蹴り込んできた。そこからは攻められっぱなしでしのぐだけ。自分たちのサッカーができなかった悔しい勝利。勝利のために自分たちのサッカーを捨ててでも勝とうとするスペインチームのメンタルを感じた」など、興味深い経験を選手とともに重ねてきた。
この年代は山梨県のフットボール専用スタジアムが完成する見とおしの7年後には19歳になる。18日の報告会を兼ねた記者会見で、「自分たちの世代がこのままトップに昇格したらヴァンフォーレは強くなると思う?」と聞くと全員が手を挙げた。甲府一筋16年目の石原克哉(韮崎市出身)は、「彼らは勝ち癖がついたと思う。これからは(同世代に負けられないという)プレッシャーも掛かるけど、それも良いこと。『俺たちは強いんだ』と思っていい。プロになる選手はみんな、子供のころは“お山の大将”。このままトップに上がれればすごい刺激になる」と経験豊富なベテランならではのコメント。世界との差はここからグッと開くし、それを縮めるための課題はフィジカル面を含めて多くあるが、甲府のファン・サポーターにとって新スタジアムと並んで楽しみが増えた。
写真:松尾潤
(甲府担当 マツオジュン)
2016/10/19 12:07