愛媛はようやく長い苦しいトンネルを抜け出せました。14試合振り、天皇杯を含めると15試合振り、期間としては約3カ月振りの勝利です。試合は相手にボールを支配される時間が長く、シュートも僅かに5本と大きな見どころは多くありませんでしたが、「誰が見てもチームとして強い気持ちを出せたプレーができていた」(赤井選手)というように、メンタル面の強さからくる個々のハードワークが光っていました。
試合後、選手たちは口々に“気持ち”の変化をアピールしていましたが、それが顕著に表れていたのが田森選手でした。普段はそれほど口数が多くなく、感情を内に秘めて黙々とプレーするタイプの選手です。しかし、この日は試合前に円陣を組んだ時、「やるのは自分たちなんだ」とチームメイトにげきを飛ばしました。意外な人物による気合に、周囲は一瞬、呆気(あっけ)にとられたようですが、有田選手は「いつもと違うタモさん(田森選手)におとこ気を感じました」と戦う気持ちのスイッチが入ったようです。また、試合中においても最終ラインから積極的に声を張って、守勢に回り苦しい展開で足の止まりそうなチームメイトを鼓舞し続けました。
実は、この田森選手のこの変化の裏にはある人物の存在がありました。田森選手が甲府在籍時に師事をし、現在でもプライベートで親交のある安間(現・富山)監督です。かつての恩師に「何かを変えなきゃいけなかったし、今の苦しい状況を打ち明けた」と吐露。そのアドバイスが形になったのが前節の田森選手の勇ましい姿のようです。それは、チームの垣根を越えた師弟愛から生まれた変化と言っても過言ではないと思います。また、円陣でげきを飛ばした件について「あそこで言うのが一番効果的だと思った」、試合中にチームメイトを鼓舞する時も「静かになっている時を選んで言った」と計算済みだったことを考えると、試合前から自らのキャラを変える大きな覚悟があったように思えます。
田森選手、ホントに男を上げました。
(愛媛担当 松本隆志)
2012/09/26 14:55