8日に行われたJ1参入プレーオフ決定戦で磐田に敗れ、東京VのJ1昇格を果たせなかったロティーナ監督。9日朝には退任が公式にリリースされ、クラブハウスには大勢のサポーターが集まり別れを惜しんだ。チームの解団式を済ませ、サポーターの前に立ったロティーナ師は、「この2年間、ありがとう」と言いかけ、声を詰まらせて目頭を押さえた。そして「私の願いは、同じ姿勢でチームを、クラブをサポートしていってほしい。この2年で近づくことができたところに届くために。偉大なクラブというのは、選手だけでなくてサポーターが作るものです。その点ではあなた方はとても偉大です」と語り、万雷のロティーナ・コールに送られクラブハウスを後にした。
その場面の前に、メディアに対し最後の囲み取材に応じた。ラ・リーガで豊富なキャリアを誇り、来日してからも常にヨーロッパの先端に目を配り続けたロティーナ師だが、一方でメディアに戦術を語ることは極端なまでに嫌った。磐田戦終了後の会見でも、「最も感じたJ1との差は何だったか?」との質問に対し、「カテゴリーに違いがあることは差があるということ。よりレベルの高い選手たちが1部に行く」と具体的には触れなかった。
しかしこの智将が、天皇杯の2回戦や3回戦といった段階ではない、プレーオフという生きるか死ぬかの舞台で必死になったJ1チームを相手に何を感じたのか。それを語ってもらえなければ日本サッカー界の損失だろう。そこで再びロティーナ師に聞いた。「試合直後に答えていただくのは難しかったかもしれないが、あらためてすべてのJ2チームを代表して聞きます。磐田戦で感じたJ1との差は何でしたか?」と。師、答えていわく——。
「カテゴリーが上がるにつれ、サッカーにおいて重要なことが明らかになる。それはスペースと時間だ。プレーのためのスペースと、それを決断して実行するための時間。1部でプレーできる選手は狭いスペースで短い時間でもプレーできる。まるで大きなスペースで長い時間があるようにプレーできる。だからこそ1部でプレーできる」
その差を埋めることはできなかったが、より多くのスペースと時間を得るためにロティーナ師が右腕のイヴァン・パランココーチとともに落とし込んできたポジショナル・プレーは、東京Vにとって貴重な財産だ。それをベースに来季から新監督の下でさらなる成長を遂げ、J1に昇格すること。師もそう願っている。
(東京V担当 田中直希)
2018/12/12 10:31