結果と内容の両面で、前回大会を上回れるか
結果と内容の両面で、前回大会を上回れるか
■ラウンド16を見据えて戦う必要性
W杯を戦う日本代表23名が発表され、鹿児島県指宿でのトレーニングキャンプを皮切りに代表チームもブラジルに向けた最後の調整が始まった。大会まで1カ月を切り、選手からもいよいよ本番モードの雰囲気が漂う。
日本代表には前回大会のベスト16を上回る成績が期待され、選手の中には「優勝を目指す」と公言する者もいる。アルベルト・ザッケローニ監督も、ハッキリ目標を明言したことはないが「世界を驚かす」という主旨の発言は何度も繰り返してきた。それも守備的なサッカーではなく、あくまで自分たちが主導権を握って戦うという。つまり、今大会は結果だけでなく内容でも、前回の南アフリカ大会を上回ることができるかに注目が集まる。
もし、ラウンド16で惜敗した過去2大会(02年W杯、10年W杯)と違う結果を求めるのであれば、決勝トーナメント初戦でベストゲームを演じることが求められる。ザックジャパンは不動のメンバーが多く、できることならそのメンバー全員が良いコンディションでベスト16の戦いを迎えることが望ましい。
グループCの日本が2位までに入り予選突破を決めたとすると、決勝トーナメント初戦で当たるのはグループD。イタリア、ウルグアイ、イングランド、コスタリカの4カ国のどれか。コスタリカの力は少し落ちるだろうが、あとはどこが来ても大差はない。対等に戦うにはベストコンディションでなければ難しい相手ばかりだ。予選リーグを勝ち抜くことに全力を尽くしていては試合は難しくなる。
■全員で戦うことができれば8強も夢ではない
当たり前のことではあるが、第1戦と第2戦の2試合で持てる力を発揮することが夢を達成する可能性を一番高めてくれる。この2試合でアドバンテージを築くことができれば、3試合目は一息つくことができるからだ。コンディションの悪い選手がいれば、そこで休みを与えることもできるだろう。
もし、それが難しいときは救世主となる選手が必要だ。極限の中で勝負を決める個の力。劇的な勝利はチームに流れをもたらし、疲労を吹き飛ばす力も持っている。ただ、そうした選手が出現するかどうかは大会が始まってみないと分からない。今季絶好調だった岡崎慎司でさえ、そうした存在になれるかどうかは誰にも分からないのだ。
ベスト16の壁は厚い。しかし、一人、二人が不調でもカバーできるほど、かつて無い選手層を持つチームができあがった。前回大会もピッチに立たなかったフィールドプレーヤーはわずか3人。全員で戦うことができれば、ベスト8以上の成績も決して夢ではないはずだ。(田中 滋)
■“最初に飛び込める存在”として FW 13 大久保嘉人
当初、サプライズ枠での選出と言われた大久保嘉人だが、早々にチームに溶け込んだ姿を見るに付け、これ以上ない最高の人選だったと思われる。ザックジャパン最大の弱点は本田圭佑への依存度が高いことだ。それはプレー面以上に、プレッシャーを全面に引き受ける精神面での負担が大きいように思われる。ペンギンなどの群れをなす動物たちは、最初の1匹が海に飛び込めば、あとは雪崩を打ったように次々と海に入る。最初に飛び込める存在は、いままでは本田しかいなかった。しかし、そこに大久保が加わった。どちらかというと繊細で神経質なタイプの多い攻撃陣に、経験豊富なだけでなく剛毅なオーラを漂わせるアタッカーが加わったことは、プレー以上の効果があると思われる。実際、大久保の横には常に若い選手の姿がある。そして、ザッケローニ監督が大久保に用意したのはトップ下のポジション。本田に万が一のことがあっても戦えるはずだ。